浦和学院高等学校(埼玉) 校長 石原正規先生
自分の個性に気づける選択肢を提供し
「社会に貢献できる」人材を育成
「自己実現」よりも「社会貢献」。自分の個性に気づき、様々な力を身につける3年間に
当校は、学校法人明星学園が運営する共学の私立高校です。埼玉県内ではマンモス校として知られており、全校生徒数約2,400人、募集定員800人の大規模校でもあります。甲子園での優勝経験がある野球部をはじめ、ハンドボールやテニス、吹奏楽部などの部活動も盛んです。近年は、民間の学習塾と連携した「放課後学習支援センター」の設置、国際バカロレア認定を視野に入れた語学教育にも重点を置いています。
当校には孔子の儒学をベースにした「吾道一貫」の建学精神と、「克己・仁愛・共生」という校訓があります。現代的な言葉で説明すれば、「社会貢献できる人間」を育てることが私たちの役割。高校で学習する目的とは何か。おそらく多くの人が「卒業後の人生を豊かにするため」「やりたいことをやって自由に生きるため」と答えるでしょう。確かに「自己実現」した時の達成感も大きいものです。しかし、誰かを笑顔にできた時、社会から必要とされた時の充足感は、自己実現以上にかけがえのないものです。社会の役に立つには、何らかの能力が必要です。その能力を養うためには努力を続けなければなりません。自分の欲望や人より多くのものを獲得するために学習するのではなく、誰かの役に立つために学習する。つまり、高校3年間は自分の好きなことや個性に気づき、それぞれの個性を社会で活かせるよう、様々な力を身につけ蓄えるための期間なのです。
生徒数が多い当校は、個々の価値観も様々ですし、卒業後の進路も様々。自分とは異なる価値観を持った仲間との協働作業を通して、それぞれの立場で各自の役割を果たし、生徒は思い思いの成長を遂げていきます。生徒たちが自分の個性に気づける環境づくりにも重点を置いており、学力や部活動、国際交流など様々な尺度で成長できる機会を提供しています。
自分の個性に気づける選択肢を提供し、成長のきっかけを支える
当校の特徴の一つとして、自分の個性に気づく「選択肢の多さ」が挙げられます。例えば、2021年に開設した「放課後学習支援センター」。進学類型の生徒を対象に、集中して自習できる個別ブース、定期試験範囲や英語検定、漢字検定などの演習プリントを設置し、わからないことは常駐するチューターに質問することができます。新学習指導要領が始まり、探究型学習が重視されるようになりました。学習指導要領では、基礎知識・技術の習得に重きが置かれる一方で、アクティブ・ラーニングや課題解決型学習などアウトプットの活動、プログラミングや統計なども取り入れなければなりません。確かな知識と技術を定着させるためには、家庭学習の時間をいかに確保するかが重要です。しかしながら、遠方から通う生徒も多く、部活動やボランティア活動に励む生徒に家庭学習を強いることも難しいものです。生徒が学習に向かう一つのきっかけとして、放課後学習支援センター設置の構想を重ねてきました。現1学年を中心に利用する生徒も増えつつあり、今後の展開を期待しています。
学習は生徒が自分でやるもの。学校側にできるのは「道具立て」をすることです。放課後学習支援センターのほかにも、GIGAスクール構想を機会に、ICT環境整備とその活用にも力を入れています。全教室にプロジェクターを整備し、校内ネットワーク環境を構築。また、一人ひとりにノートPCをレンタルし、アプリのインストール、機能のカスタマイズも認めたうえで、卒業時にはPCをプレゼントするという取り組みも始めています。
また、当校では英語教育にも力を入れており、留学プログラムや中国と台湾にある姉妹校との国際交流も充実しています。コミュニケーションのために習った英語をぶつけ合うことで、英語力向上をはかっています。現在は国際バカロレアの導入に向けて、認定プロセスに取り組んでいます。2024年度からは国際バカロレア認定校として、世界標準の教育プログラムが提供可能になります。これからの浦和学院の躍進にご期待ください。
教員の当事者意識を引き出すために「係長」としてプロジェクトを任せる
自分の個性に気づける環境づくりは、教員に対しても同様に行っています。例えば、学校運営のために必要な業務分担。校務分掌を70以上に細分化し、各係に係長を配置。教員に裁量権を与えて、プロジェクトを任せています。容認することが難しい提案も挙がってきますが、より活発な組織を目指すうえでは、教員の自主性に任せることが何より大切です。定期的な部署異動・役割変更を心がけ、教員の主体性を引き出しています。
教員をマネジメントする上で大切にしているのは、「今見る、すぐ聞く、意見を言う」「全部やる」ということ。相談や報告があったときは、後回しにしない。すぐ対応できない場合は、いつ対応できるかをはっきり伝えています。また、仕事に優先順位はつけるべきではないと考えています。重要性という意味ではどの仕事も重要だからです。教員と会話するにしても、生徒の話を聞くにしても、すべてに向き合うことを意識しています。
この仕事をしていて喜びを感じるのは、卒業生が親になって帰ってくる瞬間に立ち会えること。当校を卒業し、県内の大学に進学し、県内に生活拠点を築いて、当校に子どもを連れてくる。これ以上の喜びはありません。当校を卒業して大学に進学する生徒もいれば、専門学校に進学する生徒、社会に出て働く生徒もいます。その後の就職活動や転職活動で選択する業種・職種も異なるでしょう。つまり、高校卒業は人生における大きな起点なのです。その後の人生における選択が好ましいものだったからこそ、当校に戻ってくると思うのです。当校を卒業して、社会の様々な場面で活躍し、各々の立場でどんな「社会貢献」をしているのか、自信を持って語れる生徒になってほしいと考えています。
浦和学院高等学校(埼玉県) | |
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学 科: |
普通科(国際類型、特進類型、進学類型) |
生徒数: |
1学年977名 2学年762名 3学年719名 |