1. 新学習指導要領のポイント説明
皆さんこんにちは。リクルートの木村(株式会社リクルートまなび教育支援Division支援推進2部部長兼支援企画部セールスイネーブルメントグループマネージャー)と申します。釈迦に説法のところもあるかも知れませんが、私からは基本的なところのおさらいということで、新しい学習指導要領のどの部分がポイントになっているのかということを、前提の情報として簡単にお話させていただきます。その後、変更ポイントをベースにして座談会をやっていくという形式を想定しておりますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。
では学習指導要領の話をさせていただきます。『社会に開かれた教育課程』というテーマになっておりまして、どういう部分が開かれているのかということと、歴史的な背景も含めて、少しお話をさせていただければと思います。
10年に一度の改訂
学習指導要領は、およそ10年に一度のペースで改訂されていて、すでに移行期間に入っています。皆さん当然ご存知だと思うのですが、来年の4月から高校1年生でも正式に実施していく形になっています。小学校・中学校では、すでに全面実施が始まっていて、高校に関しては、来年から年次進行で進んでいく予定ということで、まさに探究など新しく変わる部分もあり、そこにも対応せねばならないタイミングにきている、という状態だと思います。
新学習指導要領の実施時期
平成元年あたりで『ゆとり教育』という話が入ってきました。社会の変化に自ら対応できる、心豊かな人間の育成ということで『ゆとり教育』が入ってきて、平成10~11年のタイミングでは『生きる力』という言葉が出るようになりました。これは基礎・基本を確実に身につけさせ、自ら学び自ら考える力などの『生きる力』の育成をしていこうという形で、学習指導要領が改訂されたというところです。
平成20年ぐらいのタイミングで、生きる力プラス『脱・ゆとり教育』というのが入ってくるんですが『基礎力・基本的な知識・技能の習得』と『思考力・判断力・表現力等の育成のバランス』ということを言われたのが、平成20年の改訂です。
今回『資質・能力』という考え方を再整理するということが、学習指導要領の改訂で入っています。これまでの流れを見ると、新しいものにガラリと変わるというよりは、より時代にあわせて変えているという形になっています。
改訂の基本方針は?
では基本的に何が変わったのか、という話ですが『資質・能力』の3つの柱というのを、バランスよく育てるというところが変わっています。実際に『資質・能力』とは何で、それをどういうバランスで育てるのか、というところに大きな変更が加えられています。1つめの、生きて働く『知識・技能』の習得というのは、これは元々言われていたもので、前の指導要領の改訂の時にも入ってきていますが『思考力・判断力・表現力等』の育成というのが2つめです。3つめが『学びに向かう力・人間性』の涵養という、この3つの資質・能力をバランスよく育てましょうというのが、改訂の基本方針になっているということです。
育成すべき「資質・能力3つの柱」
この3つの資質・能力をバランスよく育てることによって、社会で活躍できる人材を育てていくという話です。『資質・能力をバランスよく育てていきましょう』と定義されましたが、どうやって育てるのか、これから実際に学校の先生が考えていく話になりますが、具体的には次のページを見ていただきたいと思います。少し細かい文字も含まれているので、ゆっくりお話をしたいと思います。
新学習指導要領の概観
先ほどの資質・能力という話は、この図の上部に入っていますが、何ができるようになるかという話なんですね。これが、人間性や知識・技能、思考力・判断力・表現力等といった、割と抽象度の高い言葉で定義をされているものになりますが、ではこれをできるようになるために具体的に学ぶものは何か、というのが学習指導要領になります。
そこで、科目が新たに編成されるなどの変更があり、新たな学習指導要領になるという話です。基本的に学習内容が増えているだけで、削減はされていないんです。新たな教科・科目が新設されたり、探究といった内容が資質で入ってきたり、という形で追加されているものはありますが、削減されるものがなくて、実は内容が増えるだけという話になっている。
そこで増えていく内容をどうやって学ぶのか、学び方で工夫をしていこうという話がある訳です。この学び方というのが、主体的・対話的な深い学びや、後にも出てきますがICTを活用した個別最適学習による学び方という話になってくる。これを学校で実行していくためのカリキュラムを作っていきましょう、ということが要望されているんですね。
当然、3つの資質・能力を、新学習指導要領を使って、主体的・対話的で深い学びを活用しながらやっていくという話ではあるんですが、それを実際にやるのは学校の授業だったりしますよね。となった時に、実現できるようなカリキュラムを作ってください、という話がカリキュラム・マネジメントということです。
どういうカリキュラムで、どういう授業で、どういう学び方でやっていくのか、というのを具体的に設計してくことが、各校で求められている。ここが難しいんですが、学校で求められているのは、このカリキュラムをきちんと学ぶ内容と学び方を踏まえた上で、能力・資質が身につくように作ってください、という話になっているというのが、現況なのかなと思っております。
令和の日本型学校教育が目指す姿
これは今年10月の初等中等教育分科会で出たものですが、令和の日本型教育という話で、ここはあえて読もうと思います。『一人ひとりの児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが必要』という話なんですね。これをやっていくための手法論として、個別最適化と、協働学習の2つが重要であると言っています。
これは相反するような話なんですね。その子達の特長や、現在値にあわせた学びの最適化というのを、一斉指導ではなくやりましょう、という話をしながらも、その子達が協働的に学べるようにしていく。それを両立させるような学びを、令和の時代はやっていきます、と言っています。
3つの資質・能力というものを、実際にカリキュラムを設計した上で、学校でやっていく話になると思うんですが、そこでの手法論として個別最適と、協働が求められる、ということだと思います。
あとは協働というのも2つの考え方があって、生徒同士が学び合うとか、先生・生徒がお互いに学び合うというのも、もちろんそうなんですが、社会に開かれた学びという観点で言うと、例えば社会と学校との協働的な学びという、協働もある訳ですね。そこを踏まえた上で、どういうふうにカリキュラムを設計していくか、ということが求められるという形です。
資質・能力を身につけていくために、新指導要領で実際に学ぶものを掲示されて、その学び方というのは個別最適と協働を意識する形で、実際のカリキュラムを作っていくということです。口で言うのは簡単ですが、これがなかなか難しい。どうやるのかという話もありますが、実際にカリキュラムを作っていかなくてはいけない、ということになると思います。
カリキュラム・マネジメントの実現
実際のところ、カリキュラムをどのように作っていくのか、という話だと思います。資質・能力を磨いていく訳ですが、資質・能力という言葉は抽象度が高いので、それこそ知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性だとおいた時に、それを、どれくらい・なぜ・どの程度育てるのかということを、恐らく決めていかなくてはいけない。
どのレベルでどこを重視するのか、というのは、各学校の持つ教育目標に依存することになるのかなと思っていて、ここがしっかりしていないと究極、全部の学校が同じことをやるということが起きてしまう。学校の個別化や個性化はあまりできないので、すべてのカリキュラム・マネジメントというのは、教育目標を基にして設計されていくという話になるかと。
この教育目標、資質・能力というものを、どのレベルまで、どういう状態にまでもっていきたいかという設定があった上で、そこに到達するまでの実際のカリキュラムのデザインというものがある、ということです。
その教育目標に紐づく形で、例えば各科目で学ぶ内容や探究で行う内容、場合によっては授業外の活動も含めて、教育目標に近い人材を育成していくために、どんなカリキュラムを組むのかという話ですね。
そしてそれを実現するために、先ほど外の協働という話をしましたが、内部リソースだけでは限界があるので、外部リソースも含めてどうやって活用していくのかということを、再設計していくという話になると思います。
これは社会に開かれた学校としてやっていく上で、内外リソースを両方活用することは必要不可欠なので、そこを踏まえてどうやって全体のカリキュラムを設計するのか、という話になると思います。
それを見据えながら、ヒト・モノ・カネ・情報・時間の再配分をやっていくという話ですね。ひょっとしたら座談会のテーマになるかも知れませんが、そもそも外部リソースも含めてカリキュラムを組めているかということや、これまで何も定義されていなかったICTの活用も、カリキュラムに組み込んで設計できるかということも、ひとつのポイントになるという話です。
あとは教育目標到達のためのカリキュラム、外部リソースの活用というものが、どういう形で計画されていて、それをやってみてどうだったのか、という評価を核としたマネジメントサイクルを構築するという、実際にやっていることの評価も大事になってきます。上手くいっているところ、上手くいっていないところがあったら、修正して翌年よりよいプランをたてるというような、PDCAサイクルが回るようにしていくというのが、全体の設計になっています。
ではカリキュラム・マネジメントとは、どのようにやるのか。教育目標がしっかり定義された状態になっているかという話と、その教育目標に紐づく形のカリキュラムになっているのか。なっていないケースも非常に多いので、教育目標を達成するためのカリキュラムデザインに、そもそもなっているのかという話と、それを実現するために、開かれた学校という観点で見た時の、内外リソースの活用も含めたカリキュラムデザインになっているかという話と、それをどのように評価していくのか、という話です。この辺りのところが、実際のカリキュラム・マネジメントに必票な要素でしょうか。端的に言うと教育目標をしっかりと定義して、目標を達成するためのカリキュラムを作り、それをきちんと実行に移し、よりよく修正しながら回していくということです。
考え方としてはそうなんですが、これを実際にやってみるとどうなるのかというのは、実例を基にして考えないとイメージがつきづらいと思いますので、今日はその辺りも含めた座談会になるかと思っています。ゲストの校長先生と合流した上で、具体的な話をお聞きいただければというふうに思っております。
ということで、私からの指導要領の改訂のポイントの説明は、以上とさせていただきます。ありがとうございます。