僕が昔やっていたこのYOSAKOIソーラン祭りというお祭りは、札幌では6月にあるんです。
ですので、入学人数が増えて、300人以上という大人数になった1年生は、4月に入学して6月にやることになる。先生たちからも、それはさすがに無理じゃないかと言われたんです。みんな非常に一生懸命頑張って踊りました。
> 新陽高校のYOSAKOIソーラン祭り初参加映像(動画)なかでも、僕がすごくうれしかったのは、沿道にたくさんの保護者が来てくださって、保護者がすごく喜んでくれたことです。
学校におけるこういった活動は、だいたい体育祭や運動会で行われるけども、運動会で生徒が踊ると、踊り終わった時に、みんな「ああ、やれやれ、もうこれで踊らなくていいんだ」という感じで終わっていく。でも、このお祭りは違った。
生徒たちは、踊り終わったら「もっとやりたい、もっとやらせてくれ。」と言う。保護者も泣いて喜んでいる。生徒とも保護者とも関係のない人たちまで、たくさんの拍手をしてくれる。 本来学校がやらなければいけない体育的な活動って、こういうことなんじゃないかとすごく感じました。
そしてもう1つ、終わった直後に、北海道の教育委員会のわりとトップの方からも携帯にお電話をいただいて、「お祭り見たよ、素晴らしいね」と言っていただいた。
もともとYOSAKOIソーランというのに関わっていたから、何かきっかけになるんじゃないかと思ってやったということもあるんですけども、でもそういった、教育界で長く勤められていた方から見ても、教育的な効果もあるんだなと。
新しい価値観として、外のものをこうやって使ってもいいんじゃないか。そんなことを逆に認めていただいて、僕は非常にうれしかったんです。
僕が今日、先生たちと共有できることがいくつかあるとすれば、もしも今日学校の経営に携わられている方がいらっしゃったら、ぜひドラッガーの本をお読みになるといいと思います。
僕はいろんな方のアドバイス、ハウツーのアドバイスは切り捨てましたけども、ドラッカーの本は、学校の校長になるときにもう一回改めて読んだんです。
ドラッカーというのは経営学の泰斗で、一次大戦の前にいたユダヤ人の方ですけども。いろんな本があります。実はドラッカーの本の最初のところ、第2章に、我々の顧客は誰なんだ、ということが書いてあるんです。(P.F.ドラッカー著『現代の経営』)
僕はこれすごく考えました。じゃあ学校にとっての顧客って誰なんだろうということです。
明確に言うと、新陽高校、我々の顧客は、生徒ではないと僕は思っています。生徒ではなくて、やはり母親だろうと思っています。
正確な数字はお伝えできませんが、例えば札幌では母子家庭というのは全体の8パーセントといわれています。でも、新陽高校では8パーセント以上です。
もっと高い比率で母子家庭の生徒さんがいます。それでもお母さんたちは、非常に低い年収の中で、なんとか子どもたちを高校に進学させて、卒業させたいと、そんな思いで一生懸命頑張っているわけです。
生徒がその思いをどこまで理解して高校に通っているかというのは謎なときもたくさんありますが。でも、それでもそうやって頑張っている。
例えば、ここはお母さんも毎日遅くまで働いているので、なかなかおうちでは一緒にごはんが食べられないかもしれない。
例えば日曜日にサザエさんなんかがテレビでやっているとき、そのときぐらい、週に1回ぐらい、一緒にお母さんがつくった夕ご飯を食べている。
そんなときに、お母さんが、「最近学校どう?」と聞いて、子どもが何と言うか。その一言で、たぶん、そのお母さんの人生ってものすごい上がりもするし下がりもする。
「なんであんな学校に行かせちゃったんだろう。そもそも自分の人生って何なんだろう」って思うのか、「本当にここに行かせて良かった、子どもが一生懸命頑張ってる。」と思うのか。
その一言によって、明日からも、また一生懸命働いて、なんとか学費を納められる分頑張っていこう、そういうふうに思えるんじゃないか。そう思ったんです。
そういう意味では、新陽高校において顧客というのはお母さんじゃないか。そんなことを、ドラッカーの本を読む中でふと思ったんです。
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