セミナーレポート

ICT活用セミナー 先進校発表会 supported by スタディサプリ【先進校事例】瀧野川女子学園中学校・高等学校 前田泰介先生

瀧野川女子学園中学校・高等学校
前田泰介先生
2018.11.20
セミナー資料

ICT活用の中でのスタディサプリの位置付け

全教員、全生徒がiPad ProとApple Pencilを使用しているという瀧野川女子学園中学高等学校。近未来の社会変動と大学入試改革へ対応するため「知識の共有」が必要だと考えた同校は、その時間創出のために早くからICTを導入しています。そのような環境の中で、スタディサプリはどのような役割を果たすのか。前田泰介先生にお話を伺いました。

本校の紹介

こんにちは。瀧野川女子学園から参りました、前田泰介と申します。こういう場で先生方を前にしてお話をするのは初めてでございまして、今、ものすごく緊張しております。心臓バクバクしていて、拙いご報告になるかと思いますが、ご容赦いただければと思います。よろしくお願いします。

まず学校紹介からですが、ちなみに、瀧野川女子学園のことをご存知だった方っていらっしゃいますか?

半分もいない、3分の1くらいですね。ありがとうございます。なかなか知名度が上がらず、難しい思いをしている部分もあるのですが。

立地としては、とてもいい場所にあると私は思っております。東京都北区の上中里というところで、京浜東北線の上中里駅。この駅がマイナーといえばマイナーなのですが、その駅前から歩いて2分なんです。改札を出てすぐ、本校の校舎が見えるという、非常に高立地な場所です。

ただいかんせん、その上中里という場所にあまり知名度がない。意外と都心から近くて、山手線の田端駅の次にあたります。ぜひ、京浜東北線に乗った際には、上中里、ここかと確認をいただければ、ああ、近いんだなとわかっていただけるかと思います。

本校の創立は大正15年です。創始者が「女性が望む人生を手に入れることのできる学校をつくりたい」ということで、自宅の2階を学校にしたという、本当に小規模なところから始まった学校です。

その創始者の理念は現在も受け継がれておりまして、とにかく女性が社会で活躍し、かつ、それが社会貢献になるように、ということを目指して教育をしておりまして、進路指導もそれに向けて頑張っているところです。

学校の規模は、中高合わせて430名ほどです。コースに分かれておりまして、中高一貫コース、中学時入学した生徒のコースと、進学コース、特進コース、選抜クラスと、いうならば偏差値帯に分けております。

内訳ですが、中学入試が最近あまりふるっておらず、中高一貫コースが430名中の大体2割くらい。8割弱が、高校入学生というところが実態です。

偏差値では、いろいろな指標がありますが、一番上が選抜クラスで入学時の偏差値が50から55というところが実態です。さらに、その下の特進コースでいうと、45から50です。進学コースはご想像にお任せしますというところなのですが。

卒業後の進路に関しまして、基本的には四年制大学を一度は考えなさいと指導はしておりますが、昨年度は最終的に、専門学校が20パーセント、就職も7パーセントおりました。

その他10パーセントというのは、浪人も含めてというところです。四年制大学に向けての進路指導を一括してやっていくぞということが、なかなか難しい現状が本校にはあります。

「知識の共有」の時間創出のためにICTを導入

そういった本校におきましてICTが導入されたわけなのですが、その背景をまずはご説明します。

近未来の社会変動と大学入試改革への対応というところは、いろいろなセミナーでもいわれているので、共通理解があるかと思います。

思考力、判断力、表現力および主体的な学びの姿勢の育成というところにあって、本校としては、知識の共有です。みんながいろいろな考えや知識を持ち寄って話し合う、表現する、発表するという機会が必要なんじゃないかと。そういった機会が多くないと、やはりこういった力は伸びないんじゃないか、育成できないんじゃないかと考えました。

そうしますと、当然ですが時間が足りないというのが事実ですので、今現在やっていることを、どうにか効率良く進められないかと。そうして生まれた時間で、新しい取り組みができないかと考えました。

そのための一つとして、まずはICTを全面的に取り入れていったというところがございます。

また本校の特徴的な教育活動として、創造性教育という活動を行っております。創造性と起業家精神を養うといったもので、高校1年次、2年次が対象です。

中学入学生に関しては中学次からその下地をつくっていますが、先ほど申し上げましたように高校入学生がほとんどですので、多くは、高校1年生から本格的に活動していくという動きになります。

高校1年次には、商品企画コンペティションというのを行なっています。発想を形にして、他者の共感を得る。

ちょっと抽象的な話ですが、デザイン思考という考え方がございまして、本校の理事である東京工業大学の准教授の教えの元、生徒の「こういうものがあったらいいな」をベースに、ゼロからイチを生み出すということをやっています。現状、世の中にないけども、あったら生活が楽になるね、楽しくなるねというところを考えていこうよということを学んでおります。

高校2年次には、実際にそういった発想方法をもって、ものを作り、それをクラス内のグループで起業をした上で、実際につくって販売するということを行なっています。

来週、学園祭がございまして、そこでも高校2学年がグループごとにブースを出し、自分たちで作った製品を販売します。その利益から、利益収益の計算もする、などということを活動として行います。

これ、どこで販売しているかといいますと、ハワイ大学のキャンパスに場所を借りまして、チャリティバザーを行なっています。

ハワイには、高校2年次の秋に修学旅行で行きます。今年も10月の下旬に行くのですが、そのうちの1日を使いまして、このキャンパスで実際にものを売るということをします。

生徒は、自分たちが発想したものが形になることを喜び、かつ、他人にそれが渡って、共感してもらえることを喜び、結果、それにより、社会に貢献していく。

大きな話ですが、ちょっと不便だなと思っているところを、自分の作った商品で喜んでもらう。まさに社会貢献だと生徒には言っているのですが、そういうところを実感できる取り組みをしております。

全教員と全生徒がiPad ProとApple Pencilを使用

そういった教育活動の中で、ICTがあればもっともっとその可能性が広がるんじゃないかと、本校では平成27年度からICTの機器の導入に踏み切っております。

平成27年度には、全教員および中学生と高校1年生に、iPadAir2のセルラーモデルを配布しました。セルラーモデルにした理由は、いつでもどこでも使えることが一番望ましいと考えたからです。自宅に持って帰って、それを利用できるという環境を作りたかったというところがございます。

また、校内のWi-Fi環境もこの年度にすべて整備いたしました。どこかの教室だけというのではなく、全校、校舎内全部において、Wi-Fi環境を整備しています。

また、iPadを配付した学年、クラスの教室には、黒板の横に、55インチのモニターをつけ、そのモニターにAppleTVを設置するという形で、iPadの画面がそのモニターに投影できるという形を取っています。

当然、教員だけではなく生徒もiPadの画面を投影することが可能になっています。

このように、平成27年度、iPad Air2を一気に導入してみた結果なんですが、当然、授業自体の見た目は、ICTっぽくなりました。

なんですが、現実「ああ、こんなもんか」というのが、私のその当時の感想です。実際にiPadをお持ちの方もいらっしゃると思うのですが、やはり、大きいスマホでしかないよなと思ってしまったんです。

それは、結果としては、検索する、調べる、あとは連絡する。誰かと連絡をするためのツールであると。そしてカメラがついていますので、撮影し、それを再生するツール。言ってしまえば、そこから先の広がりがなんとなく感じ取れなかったというのが実際です。

そこで平成28年度、これまた大きな変更なのですが、12.9インチのiPad Proを導入しました。これ、実際私も普段使っているのですが、Air2は大体B5判なんですが、iPad ProはA4判です。

大きくなっただけじゃないかという話なのですが、何が違うかというと、実はこれ、ご存知の方も多いかと思いますが、Apple Pencilというものを使えまして、鉛筆同様の書き味で書き込むことができるんです。

Air2においてもタッチペンはありますし、書き込みはできるのですが、実際にそれで書き込もうとすると、感触がふにゃふにゃしているといいますか、狙ったところに線が来なかったりというところがあり、使い勝手が悪いなというのが感想としてありました。

そこでiPad Proに変え、このペンシルを使い、実際に紙に書くのと同じように運用していこうということにしました。

このiPad Proを、中学生1、2、3学年と、高校1、2年に配付しまして。その当時の高3はちょっとかわいそうだったのですが、前年に使っていたAir2を集めて、高3に渡しました(笑)。(会場笑い)卒業までもう少しだから、これ見て頑張ってね、という感じで(会場笑い)、その1年はなんとなく過ごしました。

平成29年度に、ようやく全教員と全生徒、中学、高校すべて含めて、iPad ProとApple Pencilを使用しているということになり、本年度が2年目となっています。

ICT導入はトップダウンで、内容の充実はボトムアップで

ICT環境の整備推進に関しては、本校の副校長がこういった機器が大好きで、よくある話だと思うのですが、副校長のリーダーシップのもと、情報科の教員が統括し、各学年の係の教員を配置したトップダウンという形で行っています。

良し悪しはあると思いますが、限定的にこういった機器を置くと、確かにその部分はすごく先に進むのですが、周りとの差がけっこう出てしまうので、学校現場としては余計に難しくなってくるのではないかと思います。

また、この後本校でのICTの使い方のお話をしますが、全員が同じ環境だからこそできることがあると思いますので、そういった意味では、目的を明確にして一斉にその機器の導入をするというのは、非常に意味があるのかなと思っています。

ただその一方で、内容の充実はボトムアップでいくというのがベターだなと現状では思います。

この与えられた環境の中で、教員がどのようにしたら、もっと生徒に言いたいことを伝えられるのか、生徒にもっと考えてもらえるのかということについて、常にアイデアを持ち寄り、各教科会などで共有や検討がなされています。

というのは、これも後ほど話しますが、好きな教員は、この機器が入ったら、これができる、あれができると、どんどん考えて、発想が豊かなんです。どんどんアイデアを出して、生徒にプログラムを組んでやらせる。ただ、生徒はなかなかそこまでついてこないというのが現状です。

先ほど申し上げましたが、うちの学校はコースを3つに分けておりまして、やはりコースごとに、いろいろな生徒がおりますので、そのコースごとの生徒の状況に応じて、これならいけるかな、というところを、常に周りの教員と相談しながらやっていくことが、このICTがより効果を発揮する一つのポイントかと、2年目にして感じております。

1年目は、いろいろな教員が、これでもかとやった結果、飽和状態になってしまいまして、やはり、こういった推進体制というのは必要なんだなと思っております。

「グーグルドライブ」「クラスルーム」「メタモジシェア」「キーノート」4つのアプリの活用

そういった環境の中、本校が特に活用しているアプリを4つご紹介します。本校では、まず、グーグルドライブというものを使っていて、基本的に授業で使う資料、プリント等は、インターネット上で保存、共有されております。

このグーグルドライブと関連付いたアプリで、グーグルクラスルームというものがございます。このアプリを通じて、教員から生徒への連絡や、生徒から教員へのデータでの課題提出なんかもおこなっています。

このクラスルームを通じて、メタモジシェアというアプリを使い、配信されたプリントを授業で使っているというところです。

このアプリは、PDFファイルへの書き込みが可能となっていて、本校では先ほどお見せしたiPad Proをノートの代わりとして使っておりますので、生徒には、基本的にノートは持ってこなくていいよという話を学校説明会でもしております。

また、キーノートです。今投影されています資料もキーノートでつくってきたのですが、パワーポイントが特に使われております。

これがグーグルドライブの画面です。見ていただいてわかるかと思いますが、フォルダとファイルに分かれており、フォルダの中に、授業プリント提出、授業プリント提出、自己紹介カード提出と書いてあります。

また、クラスルームは、生徒に課題を配信した結果、できあがるフォルダですので、グーグルのクラスルーム上で配信した課題、提出された課題が、いずれもこのフォルダに勝手に入ってくる形になっています。

また、自分が作成したプリントをPDF化してここに保存し、ここから生徒に配信し、これをやりなさいという指示が送れるのもこちらです。このドライブが、現状、本校においていろいろな業務の中核にあります。

もちろん、これは各授業であったり、クラスごとであったり、あるいは、任意の委員会や部活動など、その共同体ごとにグループが作れるものです。

私は世界史の教員なのですが、世界史の授業において、あるクラスに対して出した課題です。8月25日を期限にした、夏休みの課題です。世界史関連の映画プレゼンという形で、生徒に、見た映画に関してキーノートで発表できるように準備しなさいという宿題を配信し、このアプリ上で提出してもらっています。

また、先ほどPDFファイルへの書き込みという話をしましたが、本校では、メタモジシェアをノートの代わりという形で使っています。これに関して、本校の教員が紹介している動画がございますのでご紹介いたします。

ICTによって「既存のものさしで測らない」ことが可能に


ご意見はいろいろあるかと思いますが、一番最初に申し上げた通り、みんなで知識を共有することが新しい力を育成するポイントになるという考えのもと、本校ではこのメタモジシェアを使い、みんなで一つのノートをつくって、それをもとに話し合いをするということをやっています。

同様に、生徒が多く使っているアプリが、このキーノートというアプリです。先ほどのクラスルームというアプリで宿題を配信した結果、提出されたもののうちの一つです。
この子、夏休みの宿題を一生懸命頑張ってくれまして、自分なりにテーマを考えて、世界史と向き合うなんていう、私が喜んじゃうようなタイトルをつけてくれたのですが。

彼女は、夏休み中に、『アンネの日記』という映画を見て、作品情報や、登場人物、あるいは、その内容。そして、映画には描かれなかった、アンネ・フランクのその後を、自分なりに調べて、まとめるということをやってくれました。

私は、ここまでしなさいという指示はしておりませんが、生徒がこうしようかなと思うことが、結果、形にしやすいというところが、このICTのすごいところかなと思います。この生徒は、定期テストでいうと、世界史の点数はそんなに良くないです。ですが、本人がこれはこうしたいんだというところを形にしてやってくれた。

その評価に関して、私は、最高点をあげております。ですので、これまでの既存のものさしで測らないことが、このICTによって可能になってくるのかなと思っています。

スタディサプリの活用事例

最後に、スタディサプリの活用事例をお話します。

こういう場で申し上げるのはとても心苦しいのですが、本校ではスタディサプリをすごく強力に、生徒全員にシステマチックにやらせているかといいますと、実はそうではありません。

他にいろいろあるアプリのうち、あるいは、教材のうちの一つという感覚で使わせていただいております。その中で、確認テストを宿題配信し、ここに課題を設定したり、あるいは、長期休暇中の宿題としたり、補習、講習を開講する際のデータベースとして使っています。

授業においては、教員のこれが使いやすいという判断があれば、2つのパターンで使っております。1つは、予習として講義を視聴させ、授業を反転学習的に展開するということ。

「的」というのは、完全な反転学習になりきれないというところが事実ございまして。やはり、生徒の学力といいますか、知識量というところが、反転学習には重要なんだなというのが、やってみての感覚です。

ですので、まったくその知識が得られていない、蓄積されていないところで、その演習をする、反転学習をするというところになりますと、すごくブレーキがかかります。

生徒が拒否反応を起こしますし、ともすれば、保護者が出てきますので、それが今の課題だというところはあります。

特に、本校では物理の授業において、この反転学習的なことを行っていますが、これがはまる子は、すごいはまります。学力も伸びるし、物理の教員がいうには、進度は昨年度比の1.5から2倍であると。

時間が余った分は演習に回せますし、前から授業は演習ですので、実力も伸びるはずだというのですが。

ただ、そこで大きく心の中でブレーキがかかっちゃってる子は、そこに乗り切れないという部分が実際にはあるのが現状かなと思っております。

パターン2つ目ですが、復習として講義を視聴させて、そこで終わらないんです。実際に学校でやった、本校の教員の授業内容とどっちがどうだというレポートを書かせるという使い方も出てきました。

これは、面白いなと思っています。教員の質がどうこうという話ではなく、やった内容として、どこにポイントを置いて、その先生が話しているか。その比較で何が言いたいのかをレポートにしなさいということをしていますので、より一層、その学びが深くなるのかなと思っております。

こういった形ですので、全員に一律で、何時間見なさいということは、現状はしておりません。ただ、その授業をより活性化するために、教員が1つのツールとして使っていこうというのが、本校のスタディサプリの活用の仕方でございます。

ICT化の成果と今後の取り組み

成果というところで、クエスチョンマークがついておりますが、平成30年度入試の国公立の現役合格実績に関しては、近年稀に見る非常にいい結果となりました。

ですが、じゃあ、これでICT化の成果が測れているかというと、私はちょっと疑問なので、はてなマークをつけました。

その成果を皆さまにご報告できるほどには、まだ、データが収集しきれていないかなというところがございます。
また、模試の偏差値、あるいは既存の大学入試の合格実績というのが、本校の教育の取り組みを測るものさしとして適正かというところが、まだ測りきれていない部分でございます。

ただ、結果として、昨年度の入試に関しては良かったなと思っております。

今後取り組んでいきたいこと。eポートフォリオを目指して、スタディサプリの活動メモ機能を活用する、あるいは、教科横断型の授業の充実というところを図っていきたいなと思っております。

また、反転学習です。生徒が逃げない、保護者からクレームのない形をどうにかしてやっていきたいなと思っているのが、瀧野川女子学園でございます。

ぜひ、参考にいただければと思います。本日はありがとうございました。

(会場拍手)
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