セミナーレポート

ICT活用セミナー 先進校発表会 supported by スタディサプリ【先進校事例】

私立 広島翔洋高等学校
松﨑建詩先生
2018.10.25
セミナー資料

「生徒に夢を諦めさせない」ICTの強みとは

スタディサプリを実際の現場では具体的にどのように活用しているのか。また、スタディサプリを活用した時に必要となってくる教師の役割とは何か。「ソリューションとしてのICT活用」について、私立広島翔洋高等学校、英語科教諭、松﨑建詩先生にお話を伺いました。

Facebookの学習グループを通じて先進教育に触れる

広島翔洋高等学校から参りました、松﨑と申します。本来、このような盛大な場で発表をできるような人間ではないのですが、何よりも、教育熱心な先生方が集まる場に呼んでいただいたということですので、今日は、いろいろな先生方とつながりを持って、情報共有をしながら、「どうしていくのが正解なのか」といったことを、私のつたない発表にはなるのですが、聞いていただき、あとで各学校のみなさんとお話ができたらなと思っております。
まずは私の略歴を、簡単にお話させてください。もともと鹿児島の出身で、父親が中学校の英語の教員をしていたこともあり、ずっと教員になりたいと思っていました。県立の加治木高等学校というところを卒業した後、広島大学に進学しました。そこで、教育実習中に、教育学部の友達と、文学部の自分の教育力というか、知識にまったくの差があると気づきます。

(教育学部の友達は)CLTとか、何かよくわからない言葉を話していて、(それを知らない自分は)このままで先生になるのは良くないなと思い、大学院に進みました。深澤清治教授のところで、いろいろなことを勉強し、現在の広島翔洋高等学校に専任教諭として着任いたしました。

教師として勉強する中で、一番転換点となったのは、実はFacebookです。3年前から、「CEEA高校英語教育研究会」というグループに参加するようになりました。

うちは、そんなに偏差値が高い学校でもないし、そもそも、知識も技能もついていないのに、思考力、表現力、判断力を養うのは難しいだろうと思っていました。先進教育って、自分と無関係なんじゃないかな、と。

でも、実は求めれば、すぐにでも生徒に届けることができるということを知りました。そこで、いろいろな先生とつながりが出てくる中で、今はまだまだ勉強をすれば、自分も生徒にいいものを届けられるなという気持ちでいる、という感じです。本日は私なりに、スタディサプリを使った先進教育の実践報告をさせていただけたらと、考えています。

先ほど申し上げたとおり、このような場をいただけたので、新しいご縁をいただけるかなと思いまして、登壇させていただくこととなりました。今日は、教育を変える熱意を持った先生方と、こうしてお会いできるのを楽しみに、広島から参りましたので、ぜひ、前座だと思って気軽に聞いていただけたらと思います。よろしくお願いします。(会場笑い)

今日の発表の要旨です。

まず、本校について、簡単に紹介というか、こういうことをしている学校から来ましたということを具体的にお話します。

次が一番大事なところで、私が今何を思って教育に当たっているのかというところを、私なりの観点で、お話しようかと思います。

問題があるんだったら、それに対して、どう解決していこうかということと、去年、私なりに、じゃあこうじゃないのということを、スタディサプリを使ってやったことと、そのやってみた中での振り返りの部分だったり、もっとこうできるかなということだったり、コツのようなものを共有させていただき、その中で、先生方から、もっとこれがいいとか、君の発表はあまり良くなかったとか、いろいろ言っていただいて、自分の成果にもつなげたいなと思っている次第です。

スポーツが盛んな偏差値40の高校でスタディサプリを取り入れる

本校についてですが、広島県の安芸郡坂町というところにあります。生徒数は、これは頑張っているよということをアピールしたいのですが、3年生、2年生、1年生と、だんだん人数が増えています。

これは、入学者がだんだんやめていっているわけではなく、本当にほぼやめずに、入学者がどんどん増えていて、3年生と1年生を比べると、全然違うんです。いろいろ頑張っていたら、中学校の先生が興味を持ってくれて、来るようになってくれました。

他にもいろいろな要素があるのですが、スポーツが盛んです。伝統的な部分でいうと、ソフトテニスがめちゃくちゃ強いです。毎年インターハイに出ます。剣道も、去年まで4年連続インターハイに出場しています。

あと、バレーボールが強かったり、サッカーが県でベスト8だったり。とにかくスポーツが盛んな学校です。

偏差値帯に関しては、40から60という、ざっくりした書き方になっているのですが、ボリュームゾーンは40だと思っていただいて結構です。

スポーツが盛んなのですが、実は3年前から、特進コースを設置しています。ですので、今年が完成年度です。特進は少人数制です。少人数編成の賛否はあると思いますが、今回の発表は、少人数制にはあまり影響してこないです。それと、特進コースに関しては、タブレットを完備しています。

特進コースは、スタディサプリを全員申し込みます。その他のコースは、全員希望者になっています。なので、全体導入をしている学校ではないということです。

それと、勉強用のパソコンブースがあります。これは特進生専用です。じゃあ、普通コースの生徒はといったら、普通コースの生徒もパソコンを使える部屋はありますが、少人数制を敷いている特進の方が、利便性は高いという状況ですね。それと特進コースの教室には、黒板に加えて、電子黒板があります。

学校全体の話としては、2年前から、教科横断型、いわゆるクロスカリキュラムをやっていこうということで、国数英とか、国理社、英理社とかで、5人グループを組んで、1ヶ月か2ヶ月くらいで研究授業の準備をして、その間にお互い授業を見に行ったりして、もっとこうだ、ああだという話をしたりして、研究授業の発表をするという取り込みをしています。そういう機運があると。

そして有志の先生による、アクティブラーニング型の授業。これ自体は、実際は3年前からのスタート。順番的には、有志の先生がアクティブラーニングをスタートさせたのが先で、その機運が高まって、今、2年前から教科横断型がスタートしているという感じです。

それとスタディサプリの導入は4年前になります。導入した当時は、特進コースもなかったですし、ほぼ有志の先生方が声かけをして導入したような感じです。特進コースができたので、特進コースには全員入れようということで。

今年は、例えば、国語科2名、英語科は私を入れて2名、数学2名が中心となって、宿題配信をしている。当然ですが、全員が宿題配信で使っているわけではないということです。社会科や理科の先生も、授業研究で活用されています。

社会とか理科が、なぜ授業で宿題配信をしていないかというと、特進コースとそれ以外のコースが、混ざって選択授業を取っている関係で、宿題が出せないという状況みたいです。

業務過多を軽減し、生徒に良い教育を受けさせるために

さてここからが、私が今日呼んでいただけた理由と、今回の発表の中心になります。実は昨年度、私が宿題配信数で全国1位になりました。では、何やっとんねん、どんなことをしたんだ、ということを、お伝えしたいと思います。

まず、発想としては、先進的な教育、詰め込みからの脱却をし、生徒のチカラを最大限に伸ばしてあげたいということを考えました。文科省の謳っている教育を、目の前の生徒にやってやろうじゃないかと。

文科省の方が言っている内容自体は、素晴らしいと思うんです。実際、Society 5.0という発想は、私はありだと思いますし、実際、グーグルとか、ビッグデータの社会が来て、人間が人間らしく生きるためには、詰め込み型じゃダメだ、数字の暗記とかっていうのは、コンピュータのほうが強いんだから、というのは絶対来るとは思うんです。

この中に、英語の先生方、おられると思うのですが、もうすでに、日本語から英語に直すとか、英語を和訳するなんていうのは、結局、グーグル翻訳がかなり強い部分でできているわけです。その中で、人間が何をしていくべきかというところは、確かに文科省が謳っているとおりだと思います。ただ、現場がそれに応えていくだけのパワーと時間がないということを思っています。

ここが問題です。時間もない、ブラック部活がヤバい、授業改善をしたいけどできない。ICTとかもやっていきたい。例えば、グーグルドライブとか、Audacityとか使って、そういうのをやっていきたいなという思いもある。でも、使いこなすには時間がかかる。そういった中で、私はスタディサプリを用いることにしました。

要するに、文科省の掲げる目標の無茶ぶりには答えがない。「アクティブラーニングをやりなさい」「思考力、表現力、判断力を伸ばしなさい」いいじゃないですか、それは素晴らしいです。「暗記型じゃ駄目ですよ。」私もそう思います。しかし、暗記もさせて、活用もさせてね、英語は外部検定を入れるから、4skillsを身につけるように頑張っておいてください。ただし方法はおのおの考えてくれ、と、そう言われても、時間はどうするんだと。

教材も、ちょっと今までにないから、それも考えといてと。民間企業が今、結構参入していると思うんです。裾野はどんどん広がっているのですが、結局は民間任せ。それはそれでいいと思うのですが、私たち、現場の教員からしたら、何が一番いいのかなというのは迷うと思うんです。迷っている時間もないかもしれません。

英語も2020年からはセンター試験廃止して外部検定になるから(実際には2024年までセンター試験に準ずる試験を外部検定と併用)、それとセンター試験に記述式を入れるからねと。国語と数学に入ってきます。多面的、多角的な視点。これは社会と理科だと思うのですが、データの読み取り、数学とか社会ですかね。対話的な深い学び。これらの授業の工夫はというと、これは教員がやるべきでしょうと、時間いつ取るんだという話なんです。

要するに、時間がない、教材もない、業務も減っていないし、改善したくても、その暇もない。でも、自分の生徒に良い教育を受けさせたい、というところが、私が解決したかった部分だったということなんです。

身につけさせるべき学力を教員全体でシェアする

去年は実際にすごい突っ走りながらやったので、周りの先生と計画立ててやったわけではないです。ですが私が去年やった内容を、先生方に共有していくための形に直して、改めて振り返ってお伝えします。

まず導入前にするべき段階で絶対にこれは欠かせないなというのが、身に付けさせるべき学力を、校内の教員全体がシェアして、それに向けた学習計画と方法を立てていくこと。
私自身は、自分ひとりで思いを持ってやったので、去年はシェアをほとんどできていないです。これが絶対にいいだろうと思って。育てたい生徒観を自分でデザインしながらスタートを切りました。実際に先生方が導入される際には、ぜひ他の先生方や学校内で生徒観を共有されてから導入してみてください。

学習指導要領に書いてあることをそのまま実行するのもいいのですが、私が考えているのは、Can-Doリストもそうですし、目の前の生徒をどういう生徒に仕上げたいか、こういうことができる生徒にしたいというのは、現場でいいと思っているんです。現場でこれができる、こういう生徒。うちの生徒はこうあるべきというのは、実際に、教員がコーディネートしていくべきだと思っています。指導要領をベースに、各現場が、目の前の生徒に対して考えるべきだと。

学校教育法の第30条に書かれているものを図式化したものがこちらです。これは広島大学の松浦教授という、全国で講演をやられている先生が作成されたものです。

要するに、文科省が言っている知識、技能、思考力、表現力、判断力を図に表すと、こうだということで、まず、関心、意欲、態度の枠の中にないとなにも育たないと。さらに、知識、技能が下敷きになっていないと、思考力、表現力、判断力なんていうものは育たないよと。なんなら、例えば、ペリーは浦賀に何年に来ましたか、何しに来たんですかという知識がないまま、その事実に対しての賛否を論ずることは不可能ってことですね。

それじゃあ知ったかぶりの頭でっかちを育てるだけになっちゃうので、知識とか技能は必要じゃないかなと思います。私はバスケットボールを教えているのですが、レイアップシュートの技術がない人間に、いろいろ作戦を教えても、実際にそれは難しいだろうという発想と同じで、これをベースに育てていきたいなという生徒像を描きながらやった内容が、去年の内容になります。

スタディサプリで実際に何をしたのか

実際に、スタディサプリを用いたソリューションのイメージをお伝えしていこうと思います。実際に何をやったかということなんですが、到達度テストや宿題の取組み結果をベースに、生徒の力を把握するということから始めました。

私が特進コースに関わり始めたのは2年前なのでそこから、スタディサプリを実際に触り始めました。その春に当時のリクルートの営業担当の重藤さんという方が「到達度テスト」というスタディサプリに準拠している実力テストの結果を見せてくださいました。その結果というのがまあひどくて。特進コースの高校2年生なのに、高校1年の内容がほとんど理解できていない。それで目の前の生徒がどれくらいヤバいかというのがわかったので、これはどうにかせんといけんなと思って。2020年には入試も変わってしまう。

それと、全然家庭学習をしていないんです。他社のとあるテストにおいて、家庭学習時間がアンケートで取れるのですが、ほとんどの生徒の家庭学習時間がゼロ時間なんです、特進コースなのに。知識、技能もまったくない、家でも学習していない。この厳しい状況の中で、思考力、表現力、判断力を伸ばさんといけんな、という思いでした。

そこで私は、自分の力では、授業だけでどれだけ頑張っても、知識、技能を埋め込んで、家で学習を徹底させるくらいまでで精いっぱいだろうと思い、スタディサプリでどうにかしていこうと考えた経緯があります。

まったく「勉強しない」というところから、表現力、判断力までつけていきたいという中で、私の発想でいうと、知識と技能はないんだから、そこはもうスタディサプリに請け負ってもらうしかないだろうと。

そういったわけでスタディサプリをやり始めたのですが、良い点がいくつかあって、まず宿題の作成について。これは、もうポチッとボタンを押すだけでできます。回収しなくてもいいです。生徒が回答をし終わったら、勝手にデータが上がってきます。採点も終わっています。集計はいりません。この辺の業務はまったくないです。

ただ正答率を集計する機能はないので、私はエクセルでやっていました。正答率が低ければ、類題が別で2パターンあるので、合計3パターン。一つの分野で悪ければ、3パターン。さらにいうと、レベルが、ベーシック、スタンダード、ハイ、トップ。4パターンあるので、合計12パターンあるんです。

また、学習の予習、復習としても活用ができるので、このあたりはすごく業務の負担を軽減してくれた部分だと思います。ここをもし自分でやっていたら、たぶんここまでで手詰まりで、「表現力、判断力」の部分にいけていなかったか、むしろ、「知識、技能」を捨てて、「思考力、表現力」だけをやらせていたかもしれません。それって、学力の空洞化につながることになります。

スタディサプリの宿題配信機能

スタディサプリの宿題配信を使って、授業外に、生徒一人ひとりに「知識、技能」をつけていくという発想です。どういうことかというと、これが宿題配信の実際の画面です。このバー、ここが、クラスの中で何人やっているかということで、国語の宿題とか、英語の宿題がいっぱい出ている画面になっています。

こうやって、宿題を配信して、まずは宿題をしてきてください、家でやってください、と。これがあれば、生徒が宿題をやっていないとバレバレなんです。そうすると、(他人のものを)写したかどうかも絶対にわかります。写したかどうか、家でやったかどうか、今朝の電車の中で慌ててやったかどうかも、全部わかります。

正答率が極端に低い生徒がいたら、ここをポチッとやる。4択なんですが、選択肢を1、1、1とかで選んでることも結構あるんです。そういう子をつかまえるのも楽勝です。宿題の取組みの良し悪し、正答率などを見て、短期間で見た学習定着度を測り、次の宿題につなげてみました。全然手間はないです。何しろ、作成していないので。

例えば、下のデータ。これが今年のデータなんですが、今年の1年1組です。1年生に、高1のハイレベルを配信したときです。これを配信したのが6月なのですが、高1のハイレベルなんて、全然できないんです。今赤丸で囲っているのは、初回正答率です。一発目、初見で解いたときです。動画も実際見ていません。

1人だけ77%がいるのですが、他が全然わかっていなかったので、もう1回、動画を見て回答してくださいと言ってやってもらったら、授業前なのに、こういうふうに数字がちょこっと上がるんです。

この状況の中で授業ができるというのを、私は考えました。そして、それを今やっているということです。(レベルが)上がっているかといわれたら、有意差があるかどうかは微妙ですが、たぶん上がっているんです。ハイレベルはけっこう難しいのですが。

初回正答率がこうだから、状況によっては100パーセントになるまで解いてきなさいという指示を出したりもします。全部100%で返ってくることもあるので、君たち頑張ってやっているんだね、ということを言ったりもします。

その上で、授業で表現力や判断力を伸ばす課題を設定して、実際に使えることを意識します。

補足なのですが、じゃあ、まったく文法を扱わないか、全然説明しないかというとそんなことはないです。動画を見ていたらこの板書でわかるでしょうという板書をパッとやって、みんなで反復したり、発音とかをやったりはします。でも授業を50分やるとしたら、全体の中で(私が)しゃべっている時間は5分か10分くらいで、あとは、生徒が自分で発音をしたり、自分で文章を作ったりしています。

さっきは受動態のデータだったのですが、受動態を予習した後に、受動態が出てくる文章を作らざるを得ないような課題を作ります。自分で受動態の文章とか発音を何回かやって、友達に伝えた後、「では海外のお客さんにいろんな料理を紹介するスピーチをやってください」という課題を設定し、さっき松浦教授が言っていた学力の図に近づけようとしているのが、私の、実際のスタディサプリの活用方法になります。

では実際にそれをやっていてどうだったかということをお話します。

スタディサプリを導入した成果と課題

定期的に、成果を振り返りました。サイクルを回すということです。私が実際に、学校の定期試験、外部模試と外部検定の4つの試験で、学習成果を測っています。生徒個人でも、学年単位でも、回ごとの偏差値は、1から3程度の変動は許容範囲かなと思っています。数値はある程度のところで一喜一憂せずに、生徒に学習する習慣が身についているかどうかを見ていくことが大切だと思っています。

私が受け持った2017年のGTECのデータです。これは英語の検定なんですが。うちの学校のような偏差値40とかのレベルだとグレードは1が並ぶのですが、実際には1は一人だけで、あとは、3か2。

ライティングに関しては、めちゃくちゃ書かせたので、4、3、4、3、3、4、2、2、4、4、4……みたいな感じで、高1にしてはけっこういいデータになっているのではないかと。

定期試験の振り返りで毎回やっているのは、自分なりに覚書をして、資料改善をしていくための時間を捻出するということです。こういったものを作る時間のゆとりができるのは、宿題とか回収とかをせずに済むからというところもあります。

ここからはTipsなのですが、実際に、私がそういった動きをしてみた中で、これいいな、とか、これはどの先生にも知っておいてほしいなと思ったことを共有させてください。

「お説教」は教師がする仕事

その1、生徒がちゃんと宿題を解いてくるようにするための取り組み。コツというか、私なりの思いです。

スタディサプリは実際のところ、お説教をしてくれないんです。寝ていても、怒ってはくれません。
去年、文化祭の前日に、宿題が終わっていない特進コースの生徒がいて、タッタッタッと行ったら、ワーっと慌てて、「ああ、先生!」とか言ったんです。何?と思ったら、英語の講師の肘井先生が、生徒用のタブレットで、無音で、必死で、授業をしているんです。生徒は何をしているかというと、文化祭の折り鶴をつくっているんです。見ていないんです、まったく。当たり前ですが、それでも怒ってくれないので、それをどうフォローしていくかということです。

ちょっと数字が見えにくくてすみません。これは、7月7日から、7月14日までの宿題です。高校英語クイズ④。高校1年の1学期で必ずマスターすべき内容と書いてあるのですが、完了数は7で、0パーセント、まったく取り組んでいない生徒がたくさんいるということです。

この時期、何があったかというと、うちの学校は、学校をやっていません。大雨が降ったせいで、まったく学校ができずに、休校扱いになって、生徒との連絡手段もなくて、声かけができなかったんです。そうしたら、全然取り組みが変わっちゃって、こんなにやらないんだというデータです。

スタディサプリにはない声かけの機能は、教員がやるべきだと思います。学習ノートを作らせていますが、それにコメントを書いてあげたり、スタディサプリのログインの記録を見て「昨日1時間勉強するってすごいね」とか言ってあげると、喜ぶんです。

「ああ、そうなんですよ。ちょっとヤバいと思って」と。宿題が終わっていない生徒に「今日中に終わらせとけよ」みたいなことを、けっこうひどいテンションで言うと、「絶対やっておきます」とか言うんです。

やったら見てもらえる、やらないと、見られているし怒られる、という感覚は、ICTを運用していく中では必要なのかなと思います。

ランキングで生徒同士の競争心をくすぐる、「達成感」を味わってもらう

次です。ランキングの発表や、賞状の準備をして、生徒同士の競争心をくすぐっています。これは一番即効性があります。正直、高1生もこればっかり聞いてきます。「先生、私今何位?」とか、「10時間やっとったじゃん」とか、けっこう言ってきます。あと、成績のつけ方を私は開示しているので、今の君のグレードはどのくらいとか、計算できるんです。

発表点が何点で、このスピーキングが何点だったから、合計が130点満点で何点だから、このままだと成績がどのくらいか、ということを聞いてくると、授業に目線が向いているんだなと思ってうれしいです。
ちなみにこの表彰状ですが、リクルートの営業さんに「こういう賞状はないんですか?」と言ったら、その次の日に送ってくれたものです。

スタディサプリがしてくれない部分。本校は特にそうですが、多くの生徒が、周りがお膳立てをしてくれているのが当たり前、というのがあると思うんです。学ぶ意欲が非常に薄いと。うちの学校は、特にそうだと思います。

バレーをしにきた、剣道をしにきた、みたいな子がいます。そういう子の学ぶ意欲を喚起して、興味を持たせるパイプ役を、私は意識しているんです。通じているかどうかは微妙なんですが。学ぶ意欲喚起のために、今後の時代の変化、パラダイムシフトとか、Society5.0とか、ホリエモンや落合陽一先生が言ったりもしています。

最終的には、達成感を出すということです。生徒が「やって良かった」と思えるのは、私に怒られなかったときじゃないし、コメントをつけてもらったときでもないような気がするんです。

生徒が達成感を感じるのは、やはり成績が上がったときだと思うんです。自分の成長がそこで実感できる。自己肯定感です。その生徒の目指すべき学力イメージというのは、当然教員しか持っていないので、うまくおだてたり、強制してみたり、ランキングを載せたりしながら、最終的には、成績を上げてあげるのがいいんじゃないかなと思っています。

動画配信機能の活用と今後の要望

実際に業務を減らす便利な機能として、こういうことがあります。動画配信ってそんなに見ないといけないの、何を配信したらいいの、という話なんですが、リクルートさんがすごく頑張ってくれて、中身のリストがレベル別に全部あるので、実際に動画を見なくても大丈夫です。国数英はあるはずです。発展的な内容を扱う場合は、備考のところに書いてあります。

これを見て、私も動画を見たふりをして、「今度の関先生の動画めっちゃ面白いから絶対見とけ」みたいなことを言ったりもします。

最後になりますが、成果について。集団で、徐々に成績が上がっているという状況で、実際に下がっている生徒もいます。でもその生徒はだいたいやっていないです。取り組みによって、伸び方はさまざまです。めちゃくちゃやっている生徒とかは、高2で英語準1級にチャレンジしたりもします。

未来の子どもたちが幸せで豊かに生きるために

事例その1。「先生、私、英語を中学校からやり直したい、勉強しておけば良かった」こういう子はけっこういます。スポーツが盛んなので、勉強をしてきていないんです。私は、今となってはこう返せるんです。「スタディサプリ、中1からやり直せるよ。なんなら小5からOKよ。今だったら、中学校の自分より頭ええんじゃけ、やってみんさいや」と。

「家で勉強をする時間がないです、先生。部活あるから補習も出れません。帰ったら9時とかで、ごはんを食べて、お風呂に入ったらもうやる気が出ないです」という生徒がいます。スタディサプリは、動画をダウンロードして電車の中でも見れるし、テキストもアプリから見られるから大丈夫よと言います。裏を返すと私は労力を何もかけていないでスタディサプリに丸投げをしているような状況なんですが、それで大丈夫よと。

やったらやったで、褒めてあげたらいいと。文科省の言葉を借りると、個別最大化をフォローできるのが大きいんじゃないかなと思っています。つまり、生徒に夢を諦めさせない機能がついているというのが大きいんじゃないかなと。それが可能になるのが、ICTの一番強い部分じゃないかなと思っています

以上が、私が現在までで取り組んできた、ICTを使ったソリューションの中身になります。大したことではなくて、ただ宿題を配信して、声かけをしたというだけになるのですが、「採点もせず、回収もせず、動画に頼って大丈夫か?」「教育ってそんなに楽をして成果が出るものじゃないんじゃないの」と思われる先生もおられるかもしれないですが、でも、ここに参加されている先生方は、ICTを用いたい、だからここに来た。そのソリューションの先に見えているのは、楽をしたいということじゃないと思うんです

昨年度の九州のセミナーで、ある先生が、「このセミナーに参加するような先生って、みんな学校に帰ったら孤独ばい」と言っていたんです。「それでも、なんとかせんといけん。そう思った熱い人間の集まりとよ。だから、こういう場に集まって、頑張ろうという気持ちになって、うまい酒を飲んで、それで、また明日から戦っていかんといけん」と。

昨今ニュースで取り上げられているブラック部活、教員の働き方改革…。どげんかせんといけんという思いがある。変化していく時代のニーズに応えて、公正に個別最大化を実現するためには、ICTというのはソリューションとして、絶対に必要になってくると思います。

その先に見えていないといけないのは、「楽をしたい」ではなく、我々の責務である、子どもにいい教育を受けさせて、その結果、子どもが幸せで豊かに生きるための教育。そして、その結果、子どもらが社会に認められて、社会が豊かになっていく教育を目指さないといけないと思っています。本当に拙い発表で申し訳ないのですが、ここに集まった先生方とは、今後、大きな輪をつくりながら、日本の未来をつくるような、素晴らしいものをつくり上げていけたらなと思っております。ご清聴、本当にありがとうございました。

(会場拍手)
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