活用事例

苦手を把握して個別に指導。ポートフォリオの活用で、基礎学力の向上と主体性を育成

私立 東海大学附属甲府高等学校(山梨県)
2021.11.8
数学科主任/安孫子先生
 
課題
  • 基礎学力が低く、家庭学習の習慣や主体的な学習への姿勢が身についていない生徒が多い。部活で忙しい生徒でも効率よく学習できるようなサポートが必要だった。
  • 自分で考えて行動する力が弱い生徒たちに対し、普段から「目標設定」と「振り返り」を行うことによって、主体性を育成したいという思いから、ポートフォリオの活用を検討。
 活用ポイント
  • 東海大学推薦試験とコンセプトが似ている「到達度テスト」を起点として、生徒自身が苦手なところを把握。主体的な復習と教員の個別の声かけや指導によって学力を向上させる。
  • 1学年からポートフォリオ「活動メモ」のテンプレート機能を活用。「目標設定」と「振り返り」を行いながら、文章力をつけていく。
 活用効果
  • 授業中に自ら手をあげる生徒や、自身で「振り返り」をしている生徒が増え、成績も向上している。
  • 生徒の目標が明確になることで教員も指導しやすくなり、教員同士や生徒・保護者とのコミュニケーションもスムーズになった。

「到達度テスト」を起点に、苦手にいち早く対応。
部活動で忙しい生徒が効率的に学習できる仕組みを

本校の教育目標は、東海大学の「建学の精神」を具現化した「柔軟な思考力・強調する力・こころみ力・あきらめない力」を東海大学との高大一貫教育によって育成し、明日の歴史を担う強い使命感と豊かな人間性をもった人材を育てることです。教職員は、「のばせ人間力」をスローガンに、生徒一人ひとりに寄り添い、それぞれにあった適切な指導によって、自覚と責任感を持つ生徒を育てたいと考えています。

運動部、文化部共に部活動が活発な本校では、「部活動もがんばりたい、進学もしたい」という生徒に対してのサポートも充実しています。その一つが、3年前に導入した『スタディサプリ』。講義動画見放題と各コンテンツの利用で、自学自習の効率アップをはかっています。

『スタディサプリ』を導入する前は、生徒の基礎学力が低く、家庭学習の習慣や主体的な学習への姿勢が足りないことが課題でした。なんとか改善したいと考えていたのですが、定量的に「教科書のここからここまでやろう」という指導では、家庭学習の習慣や主体的な学習の姿勢を育てることはできません。藁にもすがる思いで『スタディサプリ』の導入を決めました。

当初は『スタディサプリ』の「到達度テスト」を起点に、その都度、苦手なところに早く気づいて、家庭学習で対応したり、普段の授業で反映したりと、様々なことに活用できると考えました。本校には部活動で忙しい生徒も多く、効率的よく復習できることは大きなメリットになります。また、「到達度テスト」のコンセプトが、東海大学系列の推薦基準を決める試験と似た傾向にあり、テストマッチではないですが、事前の演習になることも決め手の一つでした。さらに、アンケートやポートフォリオなどさまざまな機能がある点も魅力に感じました。

導入後、生徒たちは「自分はここが苦手だ」と自分自身を客観的に見られるようになりました。教員側も「この生徒はここが弱い」と把握できるので、授業中の全体指導に加え、個別に声をかけられるようになり、導入してとても良かったと思います。

生徒の主体性と当事者意識にフォーカスし
ポートフォリオの活用をスタート

本校の生徒たちは、自分で考えて行動する力が強いわけではありません。どちらかと言うと、勉強も部活も教員に言われないとがんばれない、進路選択に際しても主体的に意志決定できない……。学生のうちは「答えを早く見つける」ことが中心ですが、社会人になれば「答えのない世界の中で、自分で考えて答えを探す」ということが中心になります。そんな生徒たちに「生きる力」を身につけてほしい、日々の生活で「目標設定」と「振り返り」を行ってほしいと思い、主体性育成が得意なリクルートにサポートをいただきながら、ポートフォリオの活用を始めました。学校推薦型選抜・総合型選抜など面接のある大学入試にチャレンジする場合、文章が書けないとスタート地点に立てません。文章力を身につけるという意味でも、ポートフォリオは適していると思いました。

本音を言えば「生きる力」の前に、表面的にしか認識できなかった「学力」を向上させたかったのですが、これまで「こういう勉強をさせる」とか「宿題をさせる」といったことにずっと力を注いできたこともあり、指導方法や課題にばかり目がいっていました。そんなとき、『ロバを水飲み場に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない』という言葉を耳にしてピンときたのです。まずは生徒たちに、「勉強したい」とか「将来の目標を叶えるためにこの勉強をするんだ」と思ってもらわないと、どんなに良い指導法や良い課題があっても、意味がないのです。土台の部分を総じて高める、つまり生徒の主体性、当事者意識にフォーカスしないと始まらないという気づきから、主体性を育成するためにポートフォリオの活用につながりました。

現在は、1学年から「活動メモ」のテンプレート機能を活用しています。型通りに何回か書くうちに、「こう書けばいいんだ」とコツをつかみ、文章量も増えています。その後、独自で用意しているシートを活用して「自由テーマ」で「目標設定」と「振り返り」を行っています。good・bad・nextの項目に沿って書いているので、教員も「goodのここをもう少し深掘りしてみよう」「どうしてうまくいったのか考えてみよう」とか、「badはどうしたら改善できるの?」「nextには数字目標を入れてみよう」などと具体的なアドバイスができて、指導しやすくなりました。

ポートフォリオの活用を通じて、授業中に自分から手をあげる生徒や、自身で「振り返り」をしている生徒が増えてきました。そして、間違いなく文章力も成績も向上していると実感しています。「目標設定」と「振り返り」が進路実現や社会において重要であると気づいた生徒は、教員に言われなくても、さまざまなことで「振り返り」を行っています。教員同士や生徒とのコミュニケーションもスムーズになり、面談の際には明確に「どのようにがんばるのか?」「次は何を目標にするのか?」といった深い会話ができるようになりました。保護者の方にも「この子はいま、こういう目標を立てている」などと、会話の内容も充実しています。生徒の目標を理解できるようになったので、保護者の満足度も以前と比べて高いように思えます。

ポートフォリオの活用で生徒の主体性を育成しながら
コース制の導入を通じて学力向上にも目を向ける

今後は、「到達度テスト」の結果をもとに、長期休みは連動課題配信、週次で「チェックテスト」の配信を行って学習習慣の定着を促し、家庭学習の定着を図っていきたいと思います。また、来年度よりコース制が導入されるので、学力でも勝負していきたいです。ポートフォリオを上手に活用して生徒の主体性を育成しながら、学力向上にもつなげていけるよう、これまで以上に生徒のサポートに力を注いでいきます。

本校のスローガン「のばせ人間力」の本質とも言える、人間性や非認知的な部分が、生徒たちの長い人生においてはプラスになるはず。この学校に入学したからには、そこを伸ばしていきたいですし、「主体的に意志決定できる人」を多く育てたいと思っています。


教員=教える+コーチング力


科目の技術的な指導という点では、『スタディサプリ』などが今後も活躍してくれると思います。生徒のそばにいる教員の役割は、いかに動機づけを行うかということ。その意味では、教員にはコーチングが必須のスキル。生徒の良き理解者であり、伴走者であることが求められるのではないでしょうか。

私立 東海大学附属甲府高等学校(山梨県)
学科:普通科
生徒数:1学年320名 2学年315名  3学年315名
ページ内容は2021年11月時点の情報です。
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