当校の母体である学校法人伊藤学園は、「豊かな生活能力を持つ道義高き人間を育成する」という建学の精神のもと、明治33年に現在の甲府市に山梨裁縫学校として創立されました。明治、大正、昭和、平成、令和と時代のニーズに合わせて教育内容も変化し、現在は学科を普通科と音楽科の2科に改編。普通科には、国公立大学や私立大学への進学を目指す「進学コース」、大学や短期大学、専門学校への進学や就職などを幅広く支援する「総合コース」、小学校・中学校時代に学校や授業に馴染めなかった生徒を支援する「人間文化コース」があります。
生徒指導では「ここからはじまる、夢への一歩」をスローガンに、一人ひとりに寄り添い、それぞれの個性を尊重した丁寧な指導によって、生徒の挑戦を応援することに注力していますが、生徒の学力や進路が多様化する中で生徒に合った対応をすることの難しさを痛感していました。
というのも、学習意欲の高い生徒は自ら学力向上に励んでいるものの、学習意欲の低い生徒は勉強すること自体が難しく、その指導に時間を割かれ、次第に成績上位層への対応に限界を感じるようになりました。特に音楽科においては、大学進学に必要な科目がカリキュラムにないこともあり、個別に対応する時間がどうしても多くなりがちです。総合コースや人間文化コースにおいても、入学段階で義務教育範囲の定着に差があり、限られた人数で対応することに限界を感じていました。
当校では、これらの課題に対応するために、以前から校内学習施策として「学習会」を実施しています。総合コースは毎週水曜日の放課後30分間、人間文化コースでは毎週月曜日の1時間目(50分間)を学習会の時間に充て、基礎学力と学習習慣を定着させようと試みてきました。ただ、集中して取り組める生徒は多くなく、日頃の疲れからうとうとしていたり、立ち歩いて騒いでしまう生徒もいて、近年は学習会を成り立たせること自体が目的になっていました。
学習会では外部から購入したテキストを使用していました。生徒がテキストの問題を解いてまる付けを行い、担任がチェックするような形です。テキストにはテストも付属しており、そのテストに合格したかどうかは教員側で把握できましたが、合格していても、していなくても学年が上がるに連れてテキストのレベルも上がるため、生徒の実態に合っていないと感じるようになりました。そのようなズレから、答えを写してまるだけ付けておけばいいと考える生徒も多数おり、勉強に対するモチベーションの低い生徒に、いかに基礎学力と学習習慣を定着させるか頭を悩ませていました。
本校では7,8年前に数名で『受験サプリ』を使っていましたが、それが今の『スタディサプリ』に進化したとリクルートのご担当者から伺ったことをきっかけに、学習会での活用を検討しました。
過去に大手予備校の授業を配信したり、インターネットを利用した1対1授業を導入しましたが、思った通りの結果が得られず、『スタディサプリ』導入に関する懸念点があったのも事実です。「スマホを使用して、生徒は静かに問題に取り組むのか」「教員の負担が増えるのではないか」という声もありましたが、学力を問わず生徒に合った内容をスマホで気軽に学べる『スタディサプリ』は、当校の生徒に合っているのではないかという思いから、学習会での『スタディサプリ』を検討し、学校全体での導入が決まりました。