SEMINARセミナーレポート

MANABI MIRAI MEETING 2017 【トッププレゼンテーション】広尾学園高等学校 田邉 裕 校長 〜広尾学園の立場〜

広尾学園高等学校(東京)
田邉 裕 校長

2017.10.31その他

2017年9月23日に、リクルート本社ビルにて開催されたMANABI MIRAI MEETING2017。半歩先の教育のカタチをみんなで考える場として、多くの教員の方々にご参加いただきました。本レポートは、プログラムの中のトッププレゼンテーション講演を、書き起こし形式でお届けします。

女子校から共学になり、生徒数、偏差値、進学率も急激に伸びている広尾学園高等学校。どのような改革で学校を復活させたのか。また、そのような中でも広尾学園高等学校は「進学校を目指さない」そうです。その意味するところはどういったものなのか。校長の田邉先生に伺います。

広尾学園の前身、順心女子学園衰退の理由

田邉でございます。私自身は広尾学園の校長ですけれども、よくある大学の付属校と同じで、実質的には管理職メンバーが全部マネジメントをやっているので、こういうところに出て話をするというのはどんなものかということで、ちょっと気にはなっております(笑)。

(会場笑)

何しろ、たぶん会場のすべての人よりはるかに年上で古いので、新しい技術だのなんのというのはあまりよくわからないアナログ世代です。国民学校の出身ですから、非常に古いです。先ほどわかったんですが、(リクルートマーケティングパートナーズの)社長さんは、私が東大を定年退職して慶應義塾に行った時の学生でした。

それからもう一つ、私自身が非常に慣れていないことは、例えば明後日は議員さん相手に行政区域の協会の勉強会で講師をするとか、今週の終わりには日本地理学会で地理学の大学の先生を相手に地名問題について話をするとか、講演が2つ続いているんですけれども、全然今回の内容と関係ないですよね。

まず、この1989年から2015年までの生徒数の推移を見ていただければ、広尾学園がどういう状況であったかというのが非常によくわかると思います。衰退の8年、どん底の8年、そして復活の10年と。

この衰退の理由はなんだろうか。もちろん第一には、学齢人口の減少というのがありました。それから教育のコンセプトの変化がありました。

先ほどありましたが、古い広尾学園である順心女学校というのは、コンセプトが「良妻賢母を育てる」ということだったわけです。ですから、生徒の大部分が女子大とか、あるいは短期大学に行く。なのでそもそも進学校になることを考えてはいなかったと思います。

ところが、実際に数値でわかりますけども、1985年にわずか13.7パーセントだった女性の大学進学率が、(2005年には)36.8パーセントですよね。今でも覚えているんですが、私が東京大学に在籍中、1955年の理科一類に入学した女の子は3人でした。その頃に大学へ進学する女性がいかに少ない状態だったかがわかると思います。

また、最初の東大教養学部の女性の教授は独身でした。結構有名な女性の教授も、ほとんどが独身でした。やがて結婚している女性教員ができ、子どものいる教員ができ、そういう時代の変化があったと思います。

もう一つは、順心時代の女子教育に対する教師の考え方が、まだ古いままであったということが言えます。

それから、施設の老朽化、陳腐化が進んでいた。今の、医進・サイエンスコースの若い先生が着任したときには、とても貧弱な実験機器しかなかった。そういう学校でした。

ですから、当然惨状ははっきりしていて、生徒数が半分以下になって、それから3分の1になってしまう。当然授業料が入ってこない。財政が悪化する。施設の更新ができない。教員の給与が払えない。

そして、生徒の学校に対する諦めですね。ここの学校に来たら、どうせ上位の大学には行けない。先生の方にもそういう諦めがあった。当然進学実績は上がらない。偏差値は大体、表には載りませんでした。

いわゆる負のスパイラルですね。もう進学校でも何でもない学校。だから生徒が来ない。したがって給与も払えない。設備も更新できないという負のスパイラルに落ち込んでいったということです。これが前史です。

広尾学園、再生への道

そこで始まったのが、まず経営陣の刷新です。さらに生徒数の回復と同時に校舎をつくり直す、設備を整える、そういうことが行われます。

それから、落ち込んでいたときには、同窓会とかPTA、教職員、それから管理職の間のぎくしゃくしたものが進んでいって、一体感が出なかった。それを経営陣がとにかく「進学校にするんだ」ということを打ち出して、一体感を創出します。そのために、教員の意識を改革するだけでなく、研修も強化する。

それから、外に対しては、うちは何年までに何人東大に入れるんだと、そういった種類の広報活動を強化しました。

ここからどうやったら更生できるだろうか。広尾にはいくつか財産がありました。まず立地が良かった。交通の便が良かったというだけではありません。周りを見渡すと、港区全体には非常に有名な学校が多かったんです。だからうちが落ち込んでたとも言えるんですけれど。

そういう有名な私立の学校に対して、うちはどうしたらいいんだろうか。そこで一つ考えたのが、広尾の立地の良さを活かすということ。つまり周りの高学歴層は、子どもへの教育投資が非常に熱心であるはずだということで「広尾」という地名を前面に出そうと。

「順心」では、いくら板垣退助がつくってくれたにしても、あまり注目されない。立地の良さ、「広尾」を前面に押し出すため、広尾学園という校名に変更します。

そして、共学にします。もとは女子だけを相手にしていましたが、それだとマーケットが小さい。当然共学にすれば男子も入る。ただ、共学にした理由は実はそれだけじゃないんです。

周辺にある有名な学校というのは、大部分が女子校か男子校です。ご存じのように、日本でいわゆる御三家というのは男子校か女子校です。共学校でそれほど有名なのは一つ二つぐらいはありますけれども、決して上位の御三家ではなかった。そういう(差別化をする)意味でも、共学化をする。

そして、広尾学園はもともと国際的な環境にあった。周辺には大使館が目白押しにある。それから、外国から帰ってきた日本人、あるいは外国から日本に赴任してきた外国人、こういう人たちがたくさんいた。

さらに、1973年には帰国子女教育研究指定校として文科省から認可されているということがありました。こういう国際的環境の遺産というものを使って、インターナショナルコースをつくる。つまり、実質的には、英語で授業をする。でも、インターナショナルスクールではないんです。ちゃんとした一条校です。

また、先ほど言った通り、3分の1しか生徒はいなくなっていたわけです。したがって当然、先生の数も減っていたわけです。当時わずか40人だったのですが、生徒が増えるんだから、新しい感性を持った、新しい先生を呼ぼうと。

これにより、広尾の先生の平均年齢が非常に若くなります。若い人が責任をもってどんどん発言をして、改革ができるといったような、ちょうど第二次世界大戦直後の日本みたいな状況が生まれたわけです。

そういう人たちの意見の中から出てきたのが、医進・サイエンスコースです。これが大きな成果をあげます。ただその先生方のアイデアとして、このコースは、いわゆる成績上位のものを集めたようなよくある進学コースとか、選抜コースとか、そういうものではないと。本当に医学やサイエンスに興味のある生徒を育てたい。この発想の違いは一つ大きかったと思います。

転落要因を突き止めて改革に持って行く

では、転落した要因をどういうように取り込んで改革に持っていくかということです。先ほどあったように、対象学齢人口が縮小したことに対しては、別の理由もありましたが共学化を進めました。

それから、良妻賢母型の教育をするというコンセプトを、進学校にしようという形に方向転換しました。さらに古い校舎を建て替える。全館冷房、全館Wi-Fiが通る。そして大学並みの実験設備。そういうようなものを次から次へと実現していきました。

例えばそれだけ設備が整ってくると、面白いことに、3Dプリンタなんてありますね。これを企業がくださるんですよ。広尾はそんなに進んでるんならあげますって。4台だったかな。

それから当然、進学校への変身に向けた広報活動が進みます。一流大学に入れてみせようじゃないかと。私が着任したのは5年前で、生徒数が戻った後なんですけれども、まだその時には、今年は筑波大学に初めて入ったとか、どこの大学も、うちから初めて入ったというのが圧倒的に多かったんです。その度に、先生方も、後輩の在校生も、みんなうれしい。やる気になる。

したがって、入学志願者数の回復が進みます。入学者が増えただけじゃなく、志願者数がどんどん増える。先ほど学齢人口が減りますと言いましたが、うちの志願者数はいまだに増え続けています。

それから、そういう危機を経験した古い先生方。どちらかというとベテランの先生方が、本当に献身的に仕事をする。もうこれ以上やると超過勤務でどこかからお目玉を食うからやめてくれと言うのに、いや、教えたい、学校に来たい、残りたいという先生方が増えてくるんです。

そうすると、当然偏差値が上がってきます。偏差値がなかったのが、大変な勢いで上がってきました。当然進学実績も上がってくる。そうすると、インターネットなどで広尾学園は、とたたかれたりもしますけれども、同時にマスコミから、広尾学園というのはなんか変わったことをやりだしているなというふうに取材が来ます。

我々はICT教育を一生懸命やっているけど、ノウハウをどんどん教えましょう、と取材を受ける。そうすると驚いたことに、御三家といわれているレベルの学校が見学に来ます。教育委員会が来ます。国会議員の皆さんが来ます。さらに外国から、オーストリアの大使が見学に来る。アメリカやベルギーやカナダの先生方が見学に来る。そしたら突然、Google米国本社の会長さんがおいでになる。

日本で唯一シュミット会長とうちの生徒が討論会をやりました。英語で授業を受けているインターナショナルコースの生徒じゃないんです。日本語で授業を受けている医進・サイエンスコースの生徒たちが中心になって、議論をやっていました。

そういうところもどんどん見せることで、同時に生徒に緊張感を与えます。そうすると生徒は、一生懸命勉強します。居眠りできない。先生も当然一生懸命やります。これが非常にいい効果を与えているなと思います。

負のスパイラルから正のスパイラルへ

では実際どのような伸び方をしているのか。2012年からここは減りましたけれども、毎年伸びています。ここ(2017年)は例の、私立の大学が入学許可を抑制されましたよね。そのために減っていますけれども、実質的には増えたも同然です。

この他に、特に今年目立ったのが、ここ(国公立大学)です。東大にうちの生徒が2人、推薦で入った。これは何なのか。実はこれは、あとから話す教育内容に関係があります。

よく言われたんです。大学進学率は向上してないんじゃないの、と。国公立の合格者といったってせいぜい67人。東大だってわずかなもんじゃないかと。そして医学部の合格者は37人。確かに増えたかもしれないけれども、医学部を目指している進学校よりははるかに少ないです。

ところが、3年前のことです。従来のスタイルで、これぐらいまで合格者を出すとちょうど新入生のクラスが納まるなと思ったら、納まらなくなったんです。今の中3ですけれども、他の学校に行かない。想定よりはるかに多くの新入生を迎えることになってしまった。

これは大変だと、合格者数を絞らざるを得なくなります。そうすると、それがさらに偏差値の上昇につながります。先ほどの負のスパイラルが、プラスの、正のスパイラルになります。

大学進学だけを目的とする「進学校化」をやめる

それから、「三つの頂き」という言葉を我々は使っていますけれども、インターナショナルコースと、医進・サイエンスコースと、従来型の本科コースと、それぞれ三つのコースを確立して、それぞれの立場を明確にするということを行いました。

この段階で、いわゆる従来のトップ進学校の後を追っていくような「進学校化」をやめます。今、広尾学園は進学校とは標榜していません。

あちこちで言うんですけれども、私自身が東大から慶應の経済に行ったときにショックだったのは、慶應の経済で会った学生が、「先生、私、本当は慶應なんか来たくなかった」と。「東大に行きたかったんだけど落っこちちゃったんだ。高校の同級生の半分以上が東大なんです。俺は落ちこぼれだ」と。

ええ?と、私はショックを受けましたね。そういう学生を育てるような進学校ならば、私は後追いをしたくない。これは今でも、進学の相談会や、その他説明会のときに必ず言う言葉です。私はそういう「全員同じような大学を目指す」というスタイルの進学校には賛成できません。

それともう一つ、東大時代の経験があります。カンニングで退学処分を受ける学生などがいるわけです。毎年数人いました。今は知りませんが。それから、いろいろな事故や事件を起こす学生がいます。どういう学生が多いのか。

もちろんそもそもの進学者がたくさんいる高校出身者が多いのはわかるのだけれども。この会場にどの程度、校長先生方がおいでかわかりませんが、私自身が出会った、県立の旧第一中学、第一高女、そのあたりの出身者はしっかりしていました。あまりそういう事件が起きない。

そういう学生が出る学校にはしたくないということを私は口をすっぱくして言っていました。だから、偏差値の重視ということをやめました。成績が良いということよりも、一体あなたは何になりたいの。そういったことをつかませて、その適性に応じた志望を指導する。そういう方向へ行こうと。だから今、進学校化からの離脱と言っています。

生徒に「大学」を選ばせるのではなくて、実際に多様な実験、実体験、実習、見学をしたり、あるいはいろいろな講演会や行事に出ていって、その中で、これは面白いなというようなことをつかませる。それが面白いのならば、勉強する気力が出てくるんです。成績を上げるための勉強と違って、やりたいことのための勉強に変わってくるわけです。

大学の側から見ても、点数を取りたくて来る学生よりは、先生に教えてもらいたいという学生の方がはるかにかわいいでしょう。アクティブラーニングなんて言いますけれども、先生のところにやってきて、どんどん質問をしてくる。そんな学生はかわいいですよ。あるいは、発表しろと言うと、素晴らしい発表、プレゼンテーションをする。これも大学でやることを、中学・高校のレベルでやろうじゃないかと。

校長の研修会というのが東京の私立学校の協会でありましたけれども、実はそこでもう数年前、アクティブラーニングはこれからの主流であると聞きました。広尾学園でやっているスタイルじゃないの、と私自身が思いながら聞いていた記憶があります。

生徒が多様な関心を持っている。さっきもWi-Fiの話をして、生徒が1人1台コンピュータを持っているとか言いましたが、実際には、例えば電気が使えない、コンセントも使えないような、そういう過疎の村に行って生活してみる。そういったこともやらせてみるんです。発展途上国だったら、電気がないなんてそんなの当たり前なわけです。

バランスのとれた人材を育てる

それから、先進的なことだけじゃなくて、伝統的な文化も体験させます。歌舞伎というのは実際に見たことのない生徒が圧倒的に多かった。そのような文化の実体験や見学、そういったものも進めて、多様な関心を育てるような学校行事をつくり上げていきます。

大学の要望が満たせるならば、その先の社会も受け入れてくれる。例えばコミュニケーション能力と英語の力というのがうちでは注目されているんですけれども、今社会に出ると、英語は当たり前です。

つい先月、地名標準化会議という国連の会議で日本の代表として行ってまいりましたが、討論はずっと公用語で、同時通訳がつくんです。私は大体フランス語でしゃべるんですけども、最後に私がちょうど発言しているときに、突然同時通訳が終わっちゃったんです。つまり、同時通訳は6時で終わりなんです。そこから慌てて英語でしゃべることになりましたけども。

やっぱり英語は国連でさえもこれから重要になるなと実感しました。うちではネイティブの先生が21人います。その中で半分ぐらいが理系の先生です。英語を、教えているんじゃないんです。英語で、教えているんです。

また、バランスの取れた人間関係というのは、共学校の強みです。これは本当に強いと思います。男子校の進学校から大学に入って、俺はできるんだ、医学部だ、なんて言って、女の子をもの扱いして事件を起こすような学生が出る大学が、一つじゃないですよ、三つも四つも現れている。ああいうような偏った人間関係ができないという点で、私は共学校は素晴らしかったなと思っています。

じゃあ三つのコースをどのような進化の方向でつくっているのかというと、まず三つのコースの教員室を分けました。教室もフロアで分けて、それぞれのコースが先輩後輩で交流できるようにしています。

それから、前の先生方がこれからは「探求」だという話をされていましたが、これからじゃなくて、すでにうちは入っている。本科コースでは、探求論文を中3で出しています。高校でもやるんですけれども。毎年秋の文化祭で、プレゼンテーションをするんです。プレゼンテーションの勉強にもなるけれども、同時に、それに向けて探求論文を完成させる。そういうことをやるんです。今日学園に行ったら、生徒から、先生方にアンケートをしたいと。労働時間についてね。なんだと思ったら、「探求論文です」と言うんです。そういうアイデアが出てくるんです。

そして、医進・サイエンスコースでは、理数研究という活動で、ごくわずかな、片手ぐらいの人数の生徒に対して先生1人、そして実験助手を1人つけて、それぞれのテーマで研究をさせています。

今、うちではそういう研究活動を授業時間内に繰り込んでいます。ですから、先生の持ち時間が18時間だったら1時間はそれに充てる。だから17時間になりますよね。実質的には、先生方にとって、研究活動などが重い負担にならないようにしていきたいと思っています。

もう一つ。インターナショナルコースですね。外国人教員が21人と言いましたけど、ここで重要なのが、この項目です。Advenced Placement(AP)ですね。つまり、アメリカの大学の一般教養課程の科目をうちで教えるという認可を得ているんです。

英語、数学、生物、化学、物理、経済、情報。この科目については当然英語で授業をしますけれども、そこでグレード5を取ったら、その生徒の優秀さをストレートに評価してもらえる。

アメリカに留学するのは高いとよく言うけれども、奨学金をもらうのも、ただ一生懸命作文をして送ったんじゃないんです。ちゃんとした制度としてつくり上げています。先ほど高大接続というのが出ていましたが、日本の大学と日本の高校の高大接続の話しか出てこない。私たちがやっているのは、アメリカの大学との、高大接続です。

三つのコースに流動性を持たせ、「混合林」のような学校を目指す

それじゃあ三つのコースがそれぞれ勝手にやっているかというと、そうじゃないんです。コースは、特に高校進学時には変更が可能です。ですから、医進・サイエンスコースだったけれども、やっぱり自分は本科に移りたいとか、インターナショナルコースで十分英語を勉強してから医進・サイエンスへ進むとか、そういうことができるんです。

それから、中学でインターナショナルコースを2クラス化しました。中学インターナショナルコースのクラスは、AG(アドバンスグループ)とSG(スタンダードグループ)の混合で1つのクラスを作っています。AGは、インターナショナルスクールの出身者や帰国子女、SGというのは日本で育ってほとんど英語をやってこなかった生徒たちです。

2クラスだとどういうことができるか。(AG・SG)半々でしょう。2つに分けられて、また合併できるわけです。AGだけのクラス、SGだけのクラスもできますよね。混合する授業ではAGとSG相互の教え合いが生まれます。

それから中学には、サイエンスが好きな生徒ということで、今までなかった医進・サイエンスコースを1クラスつくります。そして、高校は医進・サイエンスコースを2クラスにします。どういうことかというと、下から上がってくる医進・サイエンスクラス以外の、本科やインターナショナルコースからも来たいという生徒、それから高校の新入生の中で、医進・サイエンスコースを希望する生徒、そういう人たちで大体1クラス分になる。

3コースの流動性という意味では、部活や行事や生徒会など、いろんな活動で他のコースの生徒と一緒になります。ですから、例えば運動会なんか、コースごとに競うのではなくて、いろいろなクラスがバラバラになって、色をばらけさせちゃうわけです。赤のチームとか青のチーム、それぞれで競うことになる。

そうすると、その赤のチームの中にはインターのクラスが入っていたり、医サイのクラスが入っていたり、本科のクラスが入っていたりして、一緒になって応援団を作る。そういう一体感をつくるということになるわけです。

本科、医進・サイエンス、インターナショナルというのがありますけれども、これが高校に行くと、もう一度再編成される。

どちらかというとインターナショナルコースは確かに海外大学への進学が多いです。そして医進・サイエンスは理系が圧倒的に多いですが、例えば東大の理科や各大学医学部に本科から入るなど、そういうこともあり得て、決して完全に独立しているというわけではありません。

私はこのイメージをよく言うんですけれども、広尾学園は、クラス全員がある特定の大学に行くという、いわゆる美林のような、そういう学校ではなくて、どこか原生林の、混合林の、そういうような学校を目指したいということです。

いろんな国で過ごした生徒がどのぐらいインターナショナルコースに入っているかというのは、これでおわかりいただけると思います。

私がいつも言っているんですが、一つは多様性。もう一つは現場主義。本物に出会う、キャリア教育を充実させる。研究あるいは探求をしっかりやらせる。こういうことを考えております。

キャリア教育の場合、どんなことをやっているのか。例えばスーパーアカデミアなんていうのもあります。先ほどもちょっと名前が出た、ノーベル賞を受賞された山中先生には、受賞前に、広尾学園の生徒がNHKの企画でお話を聞かせていただいた。そのようなことをやって、常に最高の、一流の人の話を聞かせる。医者になりたいのならば、医療現場に行って、手術の現場を体験させるということもやっています。

さらなる広尾学園の進化

この後、どのような格好で広尾学園は進化させるべきかということで、今言っているのは、多様性を進める。共学校の良さを発揮する。さらに、コース間の流動性を維持する。

そしてもう一つは現場主義ですね。本科でも、先ほど「探求」があると言いましたけれども、そういうことが現実にもうすでに始まっている。それから修学旅行も、ただ遊びに行くのではない。どうしても観光とか遊びという雰囲気になりたがるのですけれども、日本文化を実際に体験しようじゃないかということで、伝統的な文化を見に行くとか、実習化、体験化するということをやっています。

生徒の自主性を進めるという意味では、例えば今度文化祭がありますけども、そういう学校行事でも先生が指導するんじゃなくて、生徒会がやる。先ほど3Dプリンタの話をしましたけど、あのプリンタの管理は、実はICT委員会という生徒の委員会がやっているんです。しっかりやります。

その期待される結果として、国立難関大に成績のいい子を送るということ以上に、「そこで勉強したい」という子どもを送りたい。

私自身が大学の先生だった当時、入試委員長をやっていましたから、他の科目の採点にも出会うわけですが、大学のある先生が言うんです。「研究所の場合、採点したってどうせうちに来やしないんだから、こんなの時間の無駄だよ」と。採点委員を任命すると断ってくる先生がいるわけです。

だけど、もし「私はそこに行って、先生のところで勉強したい」と言ったら、そんなことを言いますか?今の東大がAO入試、推薦入試を始めましたね。先生方みんな喜んでいるんですよ、実は。だって、自分のところへ来たいという学生が対象なんですから。一般入試の採点なんかでやってるのと全然違います。

それから、偏差値の高い子を医学部に勧めるということよりも、医学部に興味を持つ子に勧める。例えば、今年京都大学の医学科に行った女の子は、中学受験では某名門校に残念ながら落ちたと聞いています。

でも、医療の現場に行ってみて、ああ、医者というのは面白いんだな、と。初めから医者になろうと思っていたんじゃないんです。医者になりたいと思ってから、在学中に一生懸命、猛勉強した。

推薦で入る時「自分はこういうことをやりたい」ということを、しっかりプレゼンテーションできる、そういう子に育ってたんです。だから、京都の医学部でとってくれたんです。

それからもう一つ、日本では海外の大学に行く生徒がいます。ある生徒が、某大学に行ったときに、「先生、私が行く大学は、東大よりランキングが上なんですよね。」と。もうそういうような時代です。そういう生徒が育ち始めているんです。

多様な友達がいて、多様なレベルの人がいて、勉強できる環境をつくる。それが広尾の原点だと。私は広尾の立場ということで申し上げましたが。結局それが案外、保護者の気持ちに沿っているのかなと思います。

私自身は大学の立場としてずっと広尾を見て参りましたので、必ずしも中等教育の専門家ではございませんが、脇から見てこういうようなまとめになりました。どうも、ご清聴ありがとうございました。

MANABI MIRAI MEETING 2017  広尾学園高等学校 田邉 裕 校長 ~広尾学園の立場~

2017年9月23日に、リクルート本社ビルにて開催されたMANABI MIRAI MEETING 2017。半歩先の教育のカタチをみんなで考える場として、多くの教員の方々にご参加いただきました。

女子校から共学になり、生徒数、偏差値、進学率も急激に伸びている広尾学園高等学校。どのような改革で学校を復活させたのか。また、そのような中でも広尾学園高等学校は「進学校を目指さない」そうです。その意味するところはどういったものなのか。校長の田邉先生に伺います。

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