SEMINARセミナーレポート

MANABI MIRAI MEETING 2017 【トッププレゼンテーション】西大和学園高等学校  中岡 義久 校長 「世界を変えるリーダー」を輩出する進学校をめざして  ~30年後も活躍するプラチナ人財の育成~

西大和学園高等学校(奈良)
中岡 義久 校長

2017.11.02その他

2017年9月23日に、リクルート本社ビルにて開催されたMANABI MIRAI MEETING 2017。半歩先の教育のカタチをみんなで考える場として、多くの教員の方々にご参加いただきました。本レポートは、プログラムの中のトッププレゼンテーション講演を、書き起こし形式でお届けします。

創立32周年を迎える、奈良の西大和学園高校。「世界を変えるリーダー」を輩出する進学校を目指すこの学校には、本当のリーダーを輩出するためのユニークな取り組みが多くあります。「進路指導部」や「生徒指導部」を置かず、どこに裁量権を置いているのか。修学旅行先のインドやカンボジア、またさまざまな体験学習を通し生徒たちが得るものとはどのようなものか。中岡義久先生にお話いただきました。

「世界を変える人財を多数出したい」と教師になる

皆さん、こんにちは。ただ今ご紹介いただきました中岡です。よろしくお願いします。本校はまだ30年しか経っていない新しい学校で、今日は、どのような話をさせていただくのがよいのかと考えたのですが、創設時から現在までありのままのお話をさせていただこうと思います。

私は、大学を卒業してすぐ、開校したばかりの西大和学園に勤めました。ですので、私の教員生活が本校の30年の歴史と重なります。そこで私の30年を振り返っての話を第1部で、そして後半の第2部で、現在の本校の取り組みをお話させていただきます。

私は大学時代、経営学を学び、世界で活躍したいと考えていました。教職免許は取っておこうという程度でした。

しかし、大学3年生のある日、教育法の先生に呼び出されてこう言われました。

「人生をかけて教師をやってみる気はないか。世の中はさまざまな仕事があるけれど、どの分野で活躍する人も、必ず中等教育を受ける。ノーベル賞受賞者も、総理大臣も名医もカリスマ経営者も裁判長もだ。人生において、能力や人格の形成にもっとも大切な中高時代に、価値ある生活を過ごさせることで、さまざまな方面のリーダーを世の中に送り出せる。君たったひとりではできないことができるんだ。日本を背負い世界を変えていける人材を、多数育てることができる。すべて教育にかかってるんだよ。そんな教育という仕事、素晴らしいと思わないか

このように誘われて、教職の道へ進むことになります。今でも、「世界を変える人財を多数出したい」という想いは、まったく変わっていません。

新しい西大和学園を進学校に

本校は、まさに「挑戦」という言葉がふさわしい学校だと思います。開校当時から大変活気に溢れ、教員の平均年齢が20代と若く、「よい学校にしたい」、「ゆくゆくは日本一の学校にしたい」という想いから、さまざまなことに挑戦してきました。

それは若い私たちにいつも関わっていただいた理事長(現会長)の「教育にかける熱い想い」の影響が大きかったと思います。(書籍「田舎の無名高校から東大、京大にバンバン合格した話―西大和学園の奇跡 」田野瀬 良太郎著)

私は教員生活3年目で、中学2期生の学年部長を任されました。同僚の先生方とともに、生徒の学力向上、人格形成、さらに忍耐力や体力の養成などについて、「どのような方法が効果的か」、「どのような学校にしたいか」と日夜遅くまで真剣に話し合いました。みんながガムシャラに、教育にかけていたように思います。

さまざまな教育を取り入れ、今では行事や体験学習が日本一多い学校と言われるほどになりました。今思い返すと、話し出すとキリがないほど、多くのかなりチャレンジングな取り組みもしてきました。失敗も多々ありましたが、教員としてはとてもやりがいのある楽しい時期だったと思います。

当時は、まったくの無名の学校でしたので、こんなこともありました。ある模試業者さんに中学実施の中高一貫模試を受けさせてほしいと電話したところ、「先生申し訳ないんですけど、この模試は6年一貫でも、とても難しい模試なんです」と言われまして(笑)。

(会場笑)

「そこをなんとか受けさせてください」と無理に受けさせていただいたら、ある程度の結果が出て、謝罪に来られたのを思い出します。当時の中3生の半数近くが英検2級をとるなど、手ごたえが出てきた時期でした。

学年部長に大きな裁量権を持たせる

西大和学園の特長は何か、とよく聞かれます。私は三つあると考えています。

一つは、「学年部長に大きな裁量権が与えられている」ということです。企業では当たり前のことなのかもしれませんが、人事権も学年部長に与えられています。

年度末には学年部長全員が集まって来年度の人事を決める会議が何日も続きます。校長、教頭は調整役です。生徒への影響は「担任の力」が最も大きいと思いますので、学年の責任を持つ学年部長が、担任を指名していくのは当然ではないでしょうか。

また、行事の多くや体験学習などの取り組みも、学年部長に任されています。その代わり、学年部長がその学年の生徒たちの進路保障や人格形成などに全責任を持っていきます。

私も学年部長として6年持ち上がりを3サイクル、つまり18年やってみて、「全責任をもって自分たちのやりたい教育ができる」ということは、非常にやりがいのあることだと思いました。この制度により、本校では学年部ごとにそれぞれ特色があり、どの学年にも、他の学年より高い効果をあげたいという強い想いがあると思います。

二つ目は、「全校がチーム」ということです。本校の職員室は中高合同で、校長、教頭も含めて、全教員が常にその職員室にいて、それぞれの顔が見えるようにしています。各教科の教官室も廃止しているんです。そのため、学校として急にやるべきことが出てきても、職員室で呼びかければ、どの教員も率先してやろうとしてくれます。

また、例えば高校3年の夏休みの補講を、他学年の教員が自ら手を挙げて担当したり、生徒の添削を自ら引き受けたりしています。手前みそになりますが、「生徒第一」に考え、「学校をより良くしていきたい」という熱い想いのある日本一の教員集団だと私は思っています。

また、進路指導部や生徒指導部は校務分掌にはありません。というのも、進路指導や生徒指導は教育の根幹で、一部のスキルをもった教員だけに頼るのではなく、全員が進路指導のスキルや生徒指導のスキルを身につける必要があると考えているからです。

ですので、全教員が進路指導部員であり生徒指導部員です。そして各学年部長が、進路指導部長であり生徒指導部長であるとしています。生徒指導事象を目にした教員は自らが中心となって周りの教員と共に指導をしますし、進路の相談に来る保護者や生徒があれば、自らが中心となって指導しています。

三つ目は、チャレンジ精神旺盛で柔軟性のある学校であることだと考えています。本校はまだまだ新しい学校なので、伝統に縛られることもありません。

「伝統は守るものではなく、新しく作るもの」と考え、これまで多種多様なことにチャレンジしてきました。例えば、京セラドームでの体育祭、ICTの活用などです。若手やベテラン教員からの提案や、生徒や保護者からの提案、そして卒業生からの提案なども多くあります。その中で、実際に今取り組んでいることについて、次の第2部でお話したいと思います。

大人になった時代に向けて、中高生のうちにしてあげられること

これからの高校生たちが大人になった世界はどうなるか。超グローバル化やAI、少子高齢化をはじめ、我々を取り巻く環境は激変してきます。また、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた頃には、世界全体に占める日本のGDPは10パーセント近くありましたが、現在は6パーセントです。さらに2030年には、4パーセントになると推定されています。

人口もどんどん減っていき、2050年には生産年齢人口は今の2/3となり、14歳までの子どもの数は今の約半分、780万人になると予想されます。当然、市場は国内だけでは難しく、今とは比べものにならない程、海外市場に頼ることになってくることでしょう。

雇用面では、終身雇用者比率は、現在既に大企業でも50%を切っています。これからはAIの進歩でますます低くなっていくことでしょう。

中高のうちに将来必要とされる力をしっかりとつけていなければ、大変なことになるのではないかと思います。今まではレールの敷かれた道を進んでいけばよかった、そんな時代でしたが、これからは、そのレールがありません。次代をどう生き抜いていくか真剣に考えるべきだと思います。

書籍『LIFE SHIFT』では、今の子どもたちは100歳以上まで生きるとも言われています。子どもたちが大人になった時代に必要な力はどういったものでしょう。そして私たちは今、どのようなことをしてあげられるのでしょうか。私なりに次の五つを考えてみました。

「本物に触れる」「肌で感じる」大切さ

次に私たちの取り組みの紹介です。今回は三つ挙げたいと思います。まずはこれ、どこだと思われますか。

実はインドなんです。インドといえば、インフラがあまり整っておらず、スラムも多いイメージがありますが、サイバーシティなどが大変発展した都市もあります。

生徒たちには、本で読むだけでなく、実際に行って、現状を自分の目で見、この急成長する大国の凄まじい熱気と国力、そして若者たちのハングリー精神を自分の肌で感じてほしいと思っています。

高校の修学旅行では、三つのコースから選択になっています。インドコース、ベトナム・カンボジアコース、それからシンガポール・マレーシアコースです。シンガポール・マレーシアコースが多いのではと思われるかもしれませんが、インドコース希望者が200人以上いるんです。

インドはもうすぐ人口が14億人の世界一となる大きな市場です。公用語が英語で、ITが発展した国というイメージもあります。確かにグーグルのCEOのピチャイ氏や、マイクロソフトのCEOのナデラ氏など、インド人は本当にIT関係が強いと言えます。

実際にインドに行ってみると、教育では小学校4年からプログラミングの授業が数単位もあり、高校を出る頃にみんなひとりでプログラムが組めると聞きました。

現在、世界の若者の5人に1人はインド人であり、「同級生」という観点からは日本人1人に対しインド人は20人以上という計算になります。生徒たちは将来、インドの生徒たちと、グローバルで競ったり、協働しなければならないでしょう。インドの若者は大変積極的です。実際、インドの進学校の生徒たちとテーマを決めてディスカッションさせてみると、凄い野心を持っているインドの若者たちに圧倒され、自分たちは日本で「ぬるま湯」につかっていてはいけないと強く感じるようです。

中学では、修学旅行でアメリカへ行きます。10日間ほどですが、そのうち1週間はホームステイさせます。

また、毎年40名程度の希望者は、中3の1月から3月にかけて3ヶ月間、留学をします。現地校に通い、アメリカの友人たちと過ごしてくる結果、自立していく生徒が多くなるように思います。

アメリカでの習慣や文化、価値観の違いが理解できると同時に、日本の素晴らしさもわかるようです。このような経験はおそらく、将来生きてくるものだと思います。大学院で海外に行く生徒が増えてきているのも、この影響かもしれません。

それから、第一線で活躍されている大人の方に実際に会って講演いただきます。カンボジアでは小島幸子さん、ベトナムではキリンビバレッジの社長さまなどです。

ただ聞くだけではなく、1時間ほどの質問タイムを取ります。中学校から取り組んでいるためか、質問はいつも途切れません。終了後も講演者に残って頂き、更に1~2時間、生徒たちの質問を聞いていただくこともあります。「質問して考えを聞きたい」、「自分の意見を言いたい」という生徒が育っていると実感しています。

また本校では、文科省指定のSSHやSGHをしていることもあり、山中伸弥先生や中村修二先生というノーベル賞受賞された先生や、東大や京大、阪大、奈良先端科学技術大学院大学の先生方、名医の福島孝徳先生など、一流の大人の生き方を学べることも大きな財産だと思います。「本物に触れる」「肌で感じる」という点では、中学からの多くの体験学習や、SSHやSGHの取り組みも大きいと思います。

「イノベーション創出力」「情報活用力」を学ぶ

二つ目に、中学から、多数のワークショップやケーススタディを用いて、イノベーション創出力や、情報活用力を育てる取り組みをしています。

例えば、クエスト・エデュケーションプログラムを取り入れたり、アメリカやイギリスの海外の大学生たちとディスカッションをする機会を増やしています。事前に一人ひとりが多くの時間を費やし、知識や情報を学習した上で、さまざまな提案をさせています。

また、東京へ生徒を引率した際には、(株)ミエタさんの協力のもとに、世界を切り拓かれている方にお願いし、「将来、どのように社会のリーダーとして活躍するか」を考えるセミナーを実施していただき、世界の最前線のテーマでワークショップをお願いしています。

例えばコンサル会社にお勤め後、ユカイ工学社というロボットベンチャーで活躍されている方や、インドを始めとするアジアのベンチャーキャピタルで活躍されている方などです。

このスライドは、マレーシアとつないで、第一線で活躍されている方と、テレビ会議をしながら実施したときのものです。

また、ハーバードビジネススクールの日本リサーチセンターの先生に、実際にハーバードで実施されるケーススタディをお願いしています。

生徒たちがあらかじめ、20~30枚ある経営のデータや資料を、時間をかけて研究した上で実施します。自分たちの意見を示し、全員が積極的にどんどんと発言しながら議論を深めています。生徒たちの中に、大変満足感が残る取り組みとなっています。

ICTを活用し、変わりゆく世界に対応し変化していく

三つ目は、ICTの活用です。ICTは早くから取り入れてきました。ビジネスの世界ではもう常識になっているクラウドを、本校でも教員同士の情報交換、生徒のやり取りと多くの場面で活用しています。

学習面での関わりでいうと、ICT機器の活用により、教員の授業の板書や印刷、配布といった「時間」の軽減があり、また全教室に設置した電子黒板やAppleTVをはじめ、高校生ひとり1台所有するiPadやG-Suiteによるアカウントの利用で、生徒が主体的に学べる環境は整ったといえます。

正直、学力がその利用により上がっているかというと、まだまだ問題点も多いのが現状です。しかしこれを改善し挑戦していかなければ、世界から遅れていくことでしょう。どうやってマイナスを減らし、プラスを増やしていくか、今後、改革していければと考えています。

ただ、一斉授業が中心だったこれまでと違い、生徒は、スタディサプリのような映像授業を利用して理解を深めたり、教員が厳選した配信問題に取り組むことも可能になりました

また公欠時の授業の板書を生徒同士が共有したり、アーカイブしながら生徒同士が補完しあうなど、これまでにはなかった学習のカタチができつつあります。

スタディサプリは早くから取り入れていて、授業の先取りや苦手分野の克服など、生徒によって用途もさまざまです。最近はスタディサプリEnglishを使う生徒も増え、主体的に自由に活用しているようです。

学習面以外で文化祭などの行事にも、ICTは威力を発揮します。わずかな時間の中で準備を進めることができるのも、この環境のおかげだと言えます。さまざまな展示の「調べもの」の活用はもちろんのこと、文化祭のポスター、ホームページ、CM、パンフレットなどにも活用しています。

また、教員もこれまでよりきめ細やかな活動ができるようになってきました。生徒に対してはClassroomなどの活用も活発に行われています。教員間では、グループウェアやクラウド環境により情報交換が活発に行われ、会議の短縮にもつながっています。

ただセキュリティ面での課題も多いのが現状です。日々セキュリティチェックに関する啓蒙や声掛けなどを行っています。

さて、これからの時代に対応した本校の取り組みを説明してきました。ですが、まだまだ不十分だと考えています。

ダーウィンの言葉に、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものでもない。唯一生き残るのは、変化に最も適応できるものである」とあります。世界はまだまだこれから激変していきます。それと同時に必要とされる人材も変化していきます。それに応じてこれからも改善改革を行い、さらにいろいろなものにチャレンジしていきたいと思います。

話が長くなりましたが、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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