リアルドラゴン桜プロジェクト

学校法人誠恵学院 誠恵高等学校

Vol 05
2019.6.28
劇的に学校を変えた、創成館高等学校に学ぶ!

6月28日の早朝、羽田空港に誠恵高校の飯島校長先生・高橋教頭先生をはじめとする4名の先生たちが集まりました。目的地は長崎県の諫早市にある創成館高等学校(以下創成館高校と表記)。きわめて厳しい状況から大きく変革を遂げた高校として有名で、多くのマスコミにも取り上げられています。生徒のために「学校を変える」と公言する誠恵高校の先生たちは、創成館高校から変革のヒントを学ぶために視察をすることになりました。今回は、この視察の様子をレポートします。

偏差値がつかず破綻寸前だった、
以前の創成館高校

まずは創成館高校について、ご紹介しましょう。奥田修史校長はハワイ州立大学を卒業後、祖父の代から続く学校法人奥田学園に就職します。その後お父様の急逝に伴い、32歳で奥田学園の理事長、34歳で創成館高校の校長へ就任しました。就任当時の状況は、きわめて厳しい状況だったそうです。いわゆる素行不良の生徒が多く、入試の偏差値は数字がつかなくて誰でも入れる状態。学校経営も負債が数十億円にのぼり、銀行からは新規の生徒募集停止を求められていました。いわゆる廃校の危機に直面していたのです。そんな学校が今では超難関大学への現役合格者も多数輩出し、強豪校を破って甲子園ベスト8となった野球部をはじめ、部活動でもさまざまな大会で優秀な成績を残すまでになっています。そして入試倍率は4倍を越え、県内有数の人気校へと生まれ変わりました。

改革の第一歩は先生の意識改革から
すべては生徒のために、学校を変える

創成館高校は、どのようにして学校を変えたのでしょうか?奥田校長先生に、改革のプロセスをご説明いただきました。破綻寸前の学校にとって第一にやらなければならないのは、生徒が『行きたくなる』学校に変えることです。そこでまず着手したのは、先生の意識改革でした。教員免許を持たない校長先生は、世間一般の常識と異なる教育界の常識に違和感を覚えていました。校長先生は「当時の先生は、生徒に対して本当に真摯に向き合っていました。一方で、経営に関しては無関心だったのです。普通の企業であればお客様のために全力を尽くします。それが顧客満足につながり経営に直結しているからですが、教育界の常識は違ったのです。中には上から目線で生徒に接する先生もいました。そこで、生徒=お客様が満足することを第一に考えるように意識を変えてもらいました」と語ります。突然変わった方針に、当時は先生からかなりの反発があったそうです。しかし校長先生は、ぶれることなくこの原則を語り続けました。その結果、徐々に先生の意識も変わっていったのです。現在でも全教員で毎日朝に唱和している『創成館 教員心得 十ヶ条』の一部をご紹介しましょう。『一、我々は、教育、すなわち子供達の成長に命を賭ける集団である』、『一、我々は、常に子供達に夢を語り、夢を持たせる事が生きがいである』、『我々は、一分たりとも無駄な授業をしない。授業中、退屈そうな生徒を見たら、それは自分の到らなさだと思え』。これを作った校長先生の、強い意志を感じます。

徹底的に楽しんで盛り上がれ
それが生徒のためであり、学校のためになる

その後も、具体的な改革の内容を次々に説明していただきました。そのすべてが徹底しています。たとえば制服の変更も生徒第一です。生徒が学校に着て行きたくなるものだから生徒の意見を取り入れ、いまでは海外ブランドのもので大好評だそうです。また学校のイベントも徹底的に生徒が楽しめるものに変えました。オープンキャンパスではプロのモデルによる制服のファッションショーを開き、ライブでは校長先生がボーカルで生徒と一緒に盛り上がるなど、とにかく派手なパフォーマンスで楽しめるものになっています。実はこれらのイベントには、もう一つの狙いがありました。奥田校長先生はこう語ります。「生徒が本当に楽しむのが第一です。これが実現できると、生徒の満足度が上がる。そしてその姿を見た中学生はこの学校に行きたいと思ってくれるかもしれません。保護者の方も同様ですし、弟や妹も行きたいと思ってくれるかもしれません。さらにこの様子が報道され、SNSで拡散されれば学校の宣伝にもなります」。今では、スポーツフェスティバル(体育祭)に800台の車が並び文化祭に2500名の来校者が集まるなど、在校生や中学生だけでなく地域住民も楽しみにしているイベントとなりました。当然、第一志望の中学生も増えていきます。こうして定員割れの学校が、入試倍率が4倍で第一志望率が90%、定員増の今年でも80%の学校へと変わっていったのです。

こうして大きく変わった創成館高校の変革内容について、誠恵高校の先生からは多くの質問が出ました。奥田校長先生はそれぞれの質問に、丁寧に答えてくれます。そのいくつかをご紹介しましょう。

変わったのではなく『変えた』・・・前述の通り、派手なオープンキャンパスや校長先生のパフォーマンスは大きな話題となり、生徒の満足度や中学生や保護者の評価を高めました。しかし中学校の先生や教育関係者からは、批判もあったようです。奥田校長先生は、こう語ります。「こうした方たちにどれだけ叱られても、気にしませんでした。私たちは生徒のためにベストだと思って全力でやっているので、教育界を向いて仕事をしているわけではありません。よく学校が変わったと報道されるのですが、違います。覚悟を持って『変えた』のです」。

SNSの重要性と任せる重要性・・・学校のイベントが盛り上がっている時に、校長先生はいつも「拡散しろー!」と叫ぶそうです。現在、SNSは生徒たちの世代では日常の一部。だからこそ彼らが楽しんで、面白がって拡散することで学校の実際の姿を知ってもらえると考えているそうです。校長ブログやSNSは奥田校長先生が更新しているそうですが、動画サイトへの投稿は岩永教頭先生が担当されているとのこと。奥田校長先生は、「ひどいんですよ!先日も教頭先生が爆笑動画をUPしたって夜中にメールしてきたんです。私がスポーツフェスティバルの新しい競技を試して転がっている、恥ずかしい動画を勝手にUPされました(笑)」。校長先生は、「任せる部分は担当の先生を信頼して任せることが大切です。そしてスピードが命。だからいちいち内容の確認などせず、コンプライアンスを守れば文章も任せるのです。だいたい、立派な文章だと誰も読まないでしょ?読むのは現代の中学生や高校生なのだから」と力説していました。

必ず立ち止まり、大きな声で
先に挨拶をする生徒たち

その後、校内を案内していただきました。試験前で試合が迫っている一部の生徒しか残っていなかったのですが、まず驚いたのが生徒の挨拶です。どれだけ遠くからでも生徒から先に、必ず立ち止まって「こんにちはー!」と大きな声で挨拶をしてくれるのです。もちろん誠恵高校の生徒も必ず挨拶をしますが、もっと早くより大きな声です。先生が驚いていると、校長先生がこう語りました。「この挨拶で、学校が救われたのです。きわめて厳しい経営の頃、生徒に挨拶だけは徹底させていました。ある日銀行の方が融資打ち切りを伝えに来校した時、生徒の元気な挨拶に驚いて『この学校は変わる可能性がある』と考えを改めてくださったのです」。それからの伝統なのでしょう。すべての生徒はやらされ感ではなく、自然に大きな声で挨拶をしてくれました。

創成館高校にはもうひとつ、特徴的な行事があります。毎週月曜日の朝、全校朝礼の最後に『本気のジャンケン』を全教職員と生徒でおこなうのです。これも目的がありました。月曜日の朝は誰でも気持ちがのらないものです。そこで大声を上げてジャンケンをし、本気で喜び悔しがる。そうすることで目がさめ、月曜日の1時間目の授業から全力で勉強ができるというのです。また、世の中に意味がないように思えることはたくさんあります。しかしどんなに馬鹿らしく思えることでも、本気で取り組めば何かを得ることができるという考え方を身につけているのだとか。諸喜田先生が実際に体験してみました。驚いたのはその本気度です。掛け声から大声で、ジャンケンに勝った先生は大喜び。横で見守っていた生徒も驚くほどの大声で盛り上げていました。毎週こんな感じなのかと生徒に尋ねると、「もっと大騒ぎしています。大声を出すと気持ちいいし、目も覚めますよ。ぜひやってみてください!」と明るく答えてくれました。

生徒の満足度を感じ
学校は変われると実感した一日

その後も校内を隅々まで案内していただきました。生徒への質問もご自由にどうぞということで、特に高橋教頭先生は積極的に質問をなげかけます。生徒からは次のような声を聞くことができました。
「学校はとても楽しいです。校長先生が熱すぎですけど(笑)」
「生徒が本気で何かをやりたいというと、先生も他の生徒も全力で応援してくれます。成功すれば本当に喜んでくれます。そういうところが好きです」
「他の学校の友だちには羨ましがられます。本当に楽しそうだなーって」
「(野球の)予選から応援がすごいので、お前らずるいって言われます(笑)。皆が本気で応援してくれるので、ありがたいです」
また、学校から少し離れた街でも話を聞いてみました。
「昔はもう本当にひどかったけど、今は全く違う。制服でわかるけど、目があえば挨拶してくれる。そんな生徒は創成館だけだね」
「近くの子が通っているけど、合格した時はみんなで『良かったねー』ってお祝いしたわ。昔じゃ考えられないけど(笑)」

生徒からは学校に満足している声が続き、地元の人からは昔と違って変わったとの声ばかり。学校は変えられるのだと実感することができた視察となりました。飯島校長先生は、「奥田校長先生の覚悟と本気がよく理解できた。我々がどのように本気で改革に取り組むかということですね」と語りました。また高橋教頭先生は、「スピード感をどのようにあげるか。もっともっと生徒のために変革のスピードを上げていきたいです」と語りました。さらに「8月におこなわれる誠恵高校のオープンキャンパスでも、工夫できることはやっていこう」などと、先生たちはさっそく改革にむけて動き出していました。誠恵高校はまじめでおとなしい生徒が多く、課題は異なります。しかしこの日学んだことは、今後の施策にかならず活かされていくことでしょう。