学びの現場からトップインタビュー

トップインタビューINTERVIEW

校長が変わっても変わらない学校を支えるのは チームとしての学校経営

雪谷高等学校(東京)雪谷高等学校校長/原田先生
2018.09.20
※ 掲載内容は2018年9月現在のものです。

着任して取り組んだのは 「校長が変わっても変わらない学校」づくり

当校は105年の伝統を持ち、「社会に貢献できる人の育成」を教育目標に掲げています。この教育目標を掲げるようになったのは、私が当校の校長に着任した3年前に遡ります。当時から、「文武両立」「自主自立の精神」などの言葉はありましたが、手段と目的が混在して使われることもあり、学校としてどういう生徒を育てていくのか、整理・統一する必要性を痛感していました。それからというもの、教員全員で意見を出し合い、「文武両立」を支える“確かな学力と豊かな教養”、“希望の進路実現”、“主体的な学校行事と母校愛の育成”、“思いやりと部活動の活躍”と言う4本の目標、それを支える12の取り組み、さらに36の方策に整理した教育目標が誕生しました。

なぜ、ここまで教育目標にこだわったのかと言うと、学校は校長のために存在するものではなく、在校生や卒業生、地域のために存続し続けなければならないからです。一般的に、企業の経営においてトップが変われば会社は変わると言われており、これは組織の原則でもあります。しかし、その時々の校長の思いや考えで、学校経営を大きく変えることが正しいことなのでしょうか。決してそんなことはありません。私が目指す学校経営は「校長が変わっても変わらない学校(組織)」。校長が変わることで、最終的に影響を受けるのは教員であり、生徒一人一人。次の校長に組織を承継していくために、そして、社会に飛び立つ生徒たちのために教育目標の「見える化」を行いました。

周囲から「設定した教育目標は教員に浸透しているか」と聞かれることも多いのですが、私が指示した目標は一つもありません。教育目標を設定するプロセスにおいては、教員に強制し過ぎることなく、教員の主体性や多様性を尊重し、教員全員の意見を受け止めました。教員が普段の指導で心がけていることをベースに、全教員一丸となって設定した目標だからこそ、自分たちが置かれている状況や立場でそれぞれの役割を果たすことができています。

大切なのは「手法」よりも「授業の中身」。 笑い声が絶えない「生徒との対話型授業」とは

当校は、東京都教育委員会の「アクティブ・ラーニング推進校」にも指定され、授業改善にも力を入れています。近年は「アクティブ・ラーニング」という言葉だけがひとり歩きしていますが、大切なのは「手法」ではなく「授業の中身」。当校では、生徒が積極的に授業に参加したくなるような「生徒との対話型授業」を推進しています。ただ、知識を詰め込むような授業ではなく、教員から生徒に問いかけ、生徒はそれに答える。時には教員がわざと誤答を出して、生徒の発言を引き出したり、思考に揺さぶりをかけたりすることもあります。初めて当校の授業を見た方の中には、教員と生徒とのキャッチボールの多さから「お笑いライブ」のような雰囲気と評することも。

キャッチボールがもたらす力を体感したのは13年前。私は数学を受け持っていたのですが、その日の授業は生徒との掛け合いが多く、終始生徒の活発な発言が見られました。あっという間に授業が終わり、終業のチャイムが鳴った瞬間、数学を苦手とする生徒から「あれ、もう終わっちゃったの?」と声が上がりました。生徒は問いかけられ、自分で考え、ほめられ、理解し、納得し「なんだ、こういうことか」をくり返しているうちに、あっという間に50分が過ぎたのだと思います。対話型の授業であれば、生徒も楽しみながら参加してくれると確信しました。

よく「生徒たちの家庭学習時間が少ない」と悩む先生の声を耳にしますが、楽しくない授業の予習・復習に取り組むのは生徒たちにとって大変なこと。ましてや全く授業に参加しないまま、50分もの時間を過ごすのはさらに苦痛なはずです。普段の授業から、考えることの楽しさを生徒たちに気づかせながら、生徒が主体的・対話的になれる深い学びを実現しています。

いかに生徒を主体的に授業に参加させるか。その鍵を握るのは教員です。だからこそ、学校経営のトップである校長には、教員の主体的な行動を促すチームマネジメントが求められるでしょう。東京都で実施している業績評価・自己申告にシステムを活用した年3回に自己申告書に基づく面接にて、立てた目標はどこまで達成できたか、反対に何が達成できなかったのか、達成するためには何が必要か。私はこの面談を、教員の「努力を見つける」ために活用しています。

教員の人事評価は、結果がリアルタイムにわかるものではないため、数値化するのが難しいものです。だからこそ、教員が力を入れて取り組んだことや、自主的に取り組んだことを、素直に「頑張りましたね」と認めたいのです。もちろん、面談の場では教員からアドバイスを求められることもあります。その際は具体的な行動を指示するよりも、「こうすればもっと良い結果につながるのでは?」というように、教員自身が気づきを得られるような視点で接しています。

校長として推進する「働き方改革」。 その目玉は「3からのスタート」

近年、最も力を入れているのが「教員の働き方改革」です。働き方改革と言うと、長時間労働を防ぐことを目的とされますが、当校の働き方改革は、それだけを目的としたものではありません。最大の目的は、強い組織を作ることにあると考えています。受け持つクラスや学年が変わると、全くゼロの状態にリセットして指導を行っていく教員の方も多いと思いますが、当校では、クラスの成功事例や失敗事例を教員同士で積極的に共有しあい、教育現場に活かすという取り組みを行っています。

教員をしていると、予想もしない出来事やトラブルが起こったりするものです。しかし、成功事例や失敗事例を共有しておくことで、より指導の効果を高めることも、事前に問題を回避することもできるでしょう。つまり、教員は三歩も進んだ状態「3からのスタート」を切ることができるのです。前の世代が積み上げてきた知見やノウハウを集約し、それを次の世代に活かす。こうした取り組みを実践できるのが、チームとしての最大の強みではないでしょうか。

いい指導者がいれば生徒は成長する。これは、私自身が高校時代の部活動を通して実感した思いで、今もその思いに変わりはありません。それ以来、人に影響を与える指導者になりたいと夢見て、今日まで数多くの生徒を受け持ってきましたが、教員が生徒の成長に与える影響力の大きさを、身をもって体験してきました。校長として目指すのは、トップダウン型の学校経営ではなく、全教員を含めた「チーム雪谷」としての学校経営。これからも、チームとして生徒の成長を支え、新たな伝統を創っていきたいです。

雪谷高等学校(東京)

学科:普通科
生徒数:1学年279名 2学年274名 3学年276名

導入に関するお問い合わせ・ご質問

学校向けスタディサプリの
導入に関するご質問・ご確認は、
お気軽にお問い合わせください。