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学校独自の文化を大切にする これからの学校経営のあり方

香椎高等学校(福岡)香椎高等学校校長/田中 眞太郎先生
2018.10.05
※ 掲載内容は2018年10月現在のものです。

「多様性が可能性を生む」 他の学校には真似できない独自の学校文化

本校は、香椎の地に最初に開校された香椎高等女学校と、私立の男子校であった旧制香椎中学校が統合してできた県立高校です。公立高校としての均一的な安定感と、私学が持つ個性的な創造性といった、ともすれば相反する校風を伝統的に備えた歴史を持つ、県内でも珍しい生い立ちの高等学校です。私自身も本校で学んだ卒業生の一人です。

偏差値帯で見ると地区で4〜5番手に位置する高校ですが、多様な推薦入試を採用しており、学力上位層の学生もいれば、スポーツや社会貢献活動でリーダーシップを発揮してきた学生も数多くいます。こうした多様性は可能性を生み出し、生徒たちが普段からお互いの多様性を認め合い、自分ひとりではできないことでもみんなで積極的に取り組もうとするチーム力の高い学校だと自負しています。生徒たちは開校当時から脈々と流れ続ける二つの学校の伝統を、時代を超えて継承してくれており、他の学校には真似できない独自の学校文化を築いています。

そんな本校のビジョンは、地域に根ざした真の伝統校として、校訓「愛・知・忍」の精神をもとに、地域社会の歴史と伝統を誇りとして、たくましく社会を生き抜き、未来へ飛躍できるグローバル人材を輩出できる学校を目指すこと。言い換えるならば、情報過多な現代社会において、協働性(愛)・知性と学力(知)・主体性(忍)を身につけ、自ら考え情報を収集・選択でき、主体的に行動できる人材の育成を目指しています。また、今年度は「AIと愛、ここで学び、未来を生きる!」をキャッチフレーズとし、人間の生活を最適化しつつあるAIが登場する中で、いかに人間を含めたすべてのものやことを敬愛し、尊重する豊かな心を持てるか、人間らしく生きられるか、をテーマに掲げています。

教科横断的学習指導を取り入れ 社会に役立つ学びを体験させたい

変化の激しい社会を生き抜く生徒たちが、社会の中で活躍できる資質を育成するために、いま学校教育も大きく変わろうとしています。今後は、知識や技能を習得するという従来の教科指導でなく、学んだことが実際の社会で役立つという教科指導の視点がより求められるようになるでしょう。

社会で役立つ力は教科を超えて育成しなければならない、という考え方は、すでに本校の中にもあります。本校には普通科とファッションデザイン科の2つの学科がありますが、以前は、教員の間に自分の教科だけ教えればいい、という考えがいき渡っており、各教科で学んだことが、卒業後の進路につながっていないという課題がありました。そこで取り入れたのが「教科横断的学習指導」です。総合的な学習の時間や部活動、学校行事は学んだことを発揮するためのトレーニングの場ととらえ、新たにカリキュラムを作成しました。学びと社会がつながっていることを気づかせるポイントは、教員からの発問にあります。授業では、教員から生徒に対して既成概念を揺さぶったり、既習事項を想起させたり、日常生活や仕事を意識させたりする発問を通して、生徒の興味関心を喚起させる工夫を取り入れています。

教育改革への対応において、もっとも注力すべきことの一つに教員マネジメントがあることを忘れてはなりません。これまでにない大きな改革が起ころうとしているにもかかわらず、理解が進まない教員も見受けられますが、今後は自らの役割を「生徒を大学に合格させるプロ」から「社会に貢献できる人材を育てるプロ」と定義し直す必要があるでしょう。その上で、自分は何をしたらいいかを考え、横断的に幅広く学び、自分が担当する教科指導に活かしていくという目線を持つことが重要です。マネジメントする立場の校長においても、教員の力や適性を見極め、仕事に対してベストな人材を配置するという視点が欠かせません。また、私が常々意識しているのは、「経営トップこそ実務者たれ」という言葉です。つまり、校長は他の誰よりも「先」を読み、そして学び続け、教員たちの業務内容、作業量を把握しなければならないということを意味しています。適材適所を行う上でも、マネジメントを行う意味でも、校長は実務者であることを意識して学校経営を行わなければならないと考えています。

「変わらないもの」を大切にする 学校経営のあり方

本校は3年後に創立100周年を迎えますが、経営を預かる立場から考えると、3年先ではなく、5年先、10年先を見据えて経営に携わらなくてはいけないと痛感しています。いま、もっとも考えなければならないのは、本校にしか提供できないものは何か、本校の存在価値とは何かを突き詰めることです。100周年に当たって校舎の全面改築を予定していますが、これまでと同じ教育・指導モデルで改築しても意味がありません。ICTを活用した授業、AL(アクティブラーニング)に対応できる教室など、これからの教育に対応できる校舎への改築をお願いしています。

また、3年後にはファッションデザイン科内で、学校内企業を立ち上げる予定です。生徒や卒業生がチームとなってファッションビジネスに携わり、最終的に本校の卒業生に経営を委ねることまでを検討しています。現在は海外の企業からの支援も取り付け、起業に向けて準備段階です。普通科の生徒にとってはマーケティングの勉強にもなり、ファッションデザイン科にとっては、職業や仕事に触れるキャリア教育にもつながるはずです。高校生のうちに、社会に貢献できたという体験をさせることで、社会に貢献したいという意欲を引き出したいと考えています。

教育改革の流れの中で、これまで以上に校長に求められる役割も大きくなるでしょう。校長は異動も多く、私自身38年の教員生活で20回も異動を経験してきました。校長としては、赴任先の学校の方針を変えていいのか迷うことも多いでしょう。ただ、最終的な判断の基準は「生徒」にあるべきだと考えています。その高校に根付いている文化を大事にし、「変わらないもの」を大切にすることも重要です。本校の卒業生として目指す理想の姿は、子どもや孫を入学させたいと思える高校であること。本校の建学の精神を胸に抱きながら、さらなる理想を追求するために、これからも学び続けていきたいと考えています。

香椎高等学校(福岡)

学科:普通科、ファッションデザイン科
生徒数:1学年360名 2学年400名 3学年400名

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