インタビュー詳細
出雲西高等学校(島根) 校長 永島 弘明先生

出雲西高等学校(島根) 校長 永島 弘明先生

※ 掲載内容は2019年2月現在のものです。

主体性と自己成長を促すための学校改革の取り組み


正解が見えづらい現代において 社会に役立つ人材を輩出するために

本校は学校法人永島学園が運営する私立高校です。建学の精神は「真に社会に役立つ実践的人材の育成」。昭和29年に高等経理学校(簿記の専門学校)として開校して以来、この建学の精神は営々と受け継がれ、これまでに数多くの卒業生を社会に輩出してきました。当時は個人商店も多く、経理事務をこなせる会計に強い人材を育成することが本校の担っている役割でした。つまり、建学の精神の「役に立つ」人材とは、「帳簿がつけられる」人材のことを指していたのです。

しかし、時代は移り、地域経済の発展によって在校生の進路も多岐にわたり、本校に求められる役割も変わってきました。人間の価値観が多様化し正解が見えづらい現代において、「役に立つ」とはどういうことなのか、再考しなければいけない時代になったと言えるでしょう。その時代に合った「役に立つ」実践的人材を社会に輩出すること。これこそが高等学校としての力が問われるところだと考えています。

本校では、社会に役立つ実践的人材として必要な力を、知力(知識・技能・思考力・判断力・表現力)、体力(規則正しい生活習慣・心の健康)、コミュニケーション能力(他者を理解する力・他者と協力し目標を実現する力)、耐性(自己コントロール・時間の管理)、徳性(思いやり・ボランティア精神・あいさつ・向上心・規範意識)の5つの力として定義しています。

この5つの力の育成の柱となるのは主体性。2020年に向けて、学習指導要領の改訂と大学入試改革をはじめとする教育改革が進みつつありますが、本校では以前から主体性と5つの力を育む教育を行っています。真に社会に役立つ実践的人材を育てるためにも、主体性はもちろん、多様性・協働性といった人間性を高める教育に今まで以上に力を注いでいきたいと考えています。

社会に役立つ実践的人材の定義


「7つの習慣J®」と「ルーブリック評価」を用い 生徒の主体性と自己成長を支援

本校に入学してくる生徒は、どちらかというと自己肯定感を持てていない生徒が多く、主体性を伸ばすことは簡単なことではありません。決められたことが自分の意思でできるようになっても、それは自主性の範疇であり、主体性ではありません。主体性とは、何をやるのかを自分で考え、決定し、行動できる資質です。

生徒の主体性を高めるために、本校が導入したのが「7つの習慣J®」という教育プログラムです。歴史的な偉人やスポーツ界、ビジネス界などさまざまな分野で活躍した人たちの「共通する習慣」を学びながら、なりたい自分になるための「ものの見方」や「行動」について考えてもらう授業に取り組みました。最初は小さな目標を立ててクリアしていくことからのスタートですが、自分の可能性を信じ、自分の夢や目標に向かって諦めず前向きに歩んでほしいと思っています。

「7つの習慣J®」と「ルーブリック評価」

また、生徒自らが主体性や5つの力の必要性を感じ、自ら学ぼうとする意欲が高められるような環境づくりにも取り組んでいます。それが「ルーブリック評価」を活用した自己成長の仕組みです。ルーブリックは、生徒の学習到達状況を把握、評価するための基準のこと。自己肯定感が持てていない生徒が自分の現状を把握し、さらに成長したいという前向きな気持ちを持つようになるには、自分はどこを目指し、いまの自分は何ができるのか、その「基準」を可能な限り具体的に示す必要があると考えたからです。例えば挨拶という項目を例に挙げると、生徒に対して「ただ挨拶をしなさい」と伝えるだけでは十分な指導にはなりません。ルーブリックを示すことで、自分自身がいまどの段階にあって、さらにどのような挨拶ができるように努力すればレベルアップできるのかがわかります。つまり、目標が明確になることで少しずつでも成長することができるのです。今後は教科の学習にもルーブリックを活用し、学習面での自己成長につなげていきたいと考えています。

正解がないからこそ 成功事例は自分たちで作る

本校の学校改革の事例を紹介してきましたが、これからの学校経営において重要なことは、アクティブラーニングなどの授業手法を優先するのではなく、社会から求められている資質・能力を生徒に身につけさせるという目的から手段を考えること。そして、その資質や能力がどれだけ伸びたかを評価する基準を設けることで、生徒の自己成長を促すことです。

出雲西高等学校(島根) 校長 永島 弘明先生と生徒

これからの時代に求められる真の学力を身につけるためには、学校行事や部活動など「教科外の教科」の積極的な活用が必須でしょう。特に学校行事は「昔からやっている」ということで継続しているケースも多いと思いますが、学校におけるすべての教育活動には目的があるべきです。慣例的になんとなく行うのではなく、どんな力を伸ばすための学校行事なのかを定義して共有した上で実施し、実際にどのような力につながり、どのように成長できたのか振り返りを行うことが必要だと考えています。

実際、本校で導入しつつあるルーブリックも含め、新しい学力観に基づいた評価に取り組むことができている学校はまだ少なく、成功事例がない中で取り組んでいかなければなりません。われわれ教員にこそ主体性・協働性が求められる時代と言えるでしょう。日々の業務に追われる教員にとって、新しいものに触れる機会はそう多くありません。まずは管理職自身が情報を収集・整理して理解し、自分の言葉で周囲に説明することも必要です。大切なのは自分たちの考えをしっかり持って突き進むこと。言い換えるならば、自分たちが成功事例を作るという姿勢で学校改革を推し進めることが、これからの学校経営においては重要なのかもしれません。




出雲西高等学校(島根)
学 科:
普通科(特別進学コース、福祉コース、ビジネスコース)
生徒数:
1年201名、2年206名、3年191名、計598名

出雲西高等学校(島根)



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