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自分とチームを内側から変えていく ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAK ジャパン教員ワークショップ 「Leading Self,Leading Team」現場レポート<後編>

2018.03.05 学習

先生たちは今、待ったなしの課題に取り組むことを迫られています。新学習指導要領が謳う「主体的・対話的で深い学び」をどう実現するか。児童・生徒にはどのように関わり、学校全体をその方向性にもっていくために他の教職員や外部の人にはどう働きかければいいか。全寮制の国際高校、ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAK ジャパン(以下、UWC ISAK)は、全国の先生にまさにそうした課題を考えてもらう1泊2日のワークショップを開催しました。その内容を、全2回に分けてお届けします。

後編でご紹介するのは、2日目のワーク。生徒との「チーム」や、校務分掌などの教職員との「チーム」を、どうすればより素晴らしいチームにできるかを考えました。

ワーク2日目 どうすれば「いいチーム」を実現できる?

■チームに働きかける(1) うまくいくチームの特徴は?

ようかい体操第一を踊ってシャキッと目覚めることから始まった2日目。

今日のテーマは「チームをリードする」。

そのテーマを、ビジネスの最前線や、ビジネススクールのプログラム開発でチームづくりに関わってきた複数の講師と一緒に考えることになった。

まずは「学校にはどんなチームがあるか」を、みんなで思いつくだけあげることに。

教員と児童・生徒からなるチーム。クラス、学年、部活動、委員会など。

教職員によるチーム。校務分掌(教務部や生徒指導部や保健部など)、教科別の集まり、管理職の集まり、ある目的で一時的に組織されるプロジェクトチームなど。

次に、そうしたチームを経験する中で感じた「うまくいったチーム」と「うまくいかなかったチーム」それぞれの特徴を、3~4人のグループで話し合った。

それを付箋に書き出して、全員で共有もした。

■チームに働きかける(2) チームにあってほしい安心感とは?

そのうえで参考資料として示されたのが、グーグルのアリストテレスプロジェクトの調査。

高い成果を出すチームと、低い成果にとどまるチームの違いを、180のチームをもとに同社が調べたところ、うまくいくチームの特性として次の5つが見えてきたという。

(1)心理的安全性このチームなら、間違いもありうる提案や、意見の衝突といった“リスク”だって冒せる、という安心感があり、自分の弱点もさらけ出せる。
(2)信頼性各メンバーがやるべきことを時間内に行うことで、高水準の仕事を達成できる。
(3)構造と明確性各メンバーが明確な役割、計画、ゴールをもっている。
(4)意義メンバーそれぞれが仕事に個人的な意義を感じている。その意義は、自己表現できる喜びから、お金を得ることまで、人によって異なっていい。
(5)インパクトメンバーそれぞれが自分たちの仕事に価値を感じていて、この社会に変化をもたらせる、と考えている。出所:Google『re:Work』Identify dynamics of effective teamsをもとに作成 https://rework.withgoogle.com/guides/understanding-team-effectiveness/steps/identify-dynamics-of-effective-teams/

同じ人でも、これらが満たされたチームにいるときと、満たされていないチームにいるときでは、パフォーマンスの質が違っていたそう。

なかでも重要なのが心理的安全性だという。

講師が問いかけ、再びグループで話し合うことを求めた。

「あなたがリードしたいチームに、心理的安全性はありますか? NOだとすれば、その安全性を妨げている要因は何だと思いますか?」

■チームに働きかける(3) 2つの軸でチームをとらえる

続いて学んだのは、「チーム・ラーニング」という考え方。

チームの現状をとらえたうえで、より成果を出せる状態にもっていくための一つのアプローチだ。

海外の大学のイノベーション・プログラム――この社会に創造的な商品・サービス・事業をどう生み出すかを考えるプログラム――などで活用されている。

アプローチとしてはまず、チームの現状を診断することから始めるのだが、その1手法として、エイミー・C・エドモンドソンの著書『チームが機能するとはどういうことか』で示されている次のような枠組みも紹介された。

チームを「心理的安全」と「責任」という2軸から4つのゾーンに分けてとらえてみる。

(1)心理的安全が低い/責任が低い(無関心ゾーン)

(2)心理的安全が低い/責任が高い(不安ゾーン)

(3)心理的安全が高い/責任が低い(快適ゾーン)

(4)心理的安全が高い/責任が高い(学習ゾーン)その「心理的安全」と「責任」の関係についてはこのように解説されている。「心理的安全を高めるというのは、自由放任の、あるいはだらしのない、あるいは規律のない組織の雰囲気をつくることではない。それは、人々が進歩や革新に必要なリスクを冒しつつ安心感を覚えられる環境をつくるということなのである。心理的安全はグループの人間関係上の環境における一つの構成要素であり、責任もまたそうした構成要素の一つである。そして責任によって、高い基準を守ったり挑みがいのある目標を追求したりすることを人々がどれくらい求められるか、その程度が決まる」(169ページ)出所:エイミー・C・エドモンドソン『チームが機能するとはどういうことか』(英知出版)

つまりは「心理的安全」と「責任」は相反するものではない、ということ。

むしろ、心理的安全が高まると責任も向上するとして、同書ではその関連性についても事例を交えながら詳細に取り上げている。

この枠組みが示されたうえで、先生たちは講師からまた投げかけられた。

「心理的安全と責任、この2軸でとらえると、学校でみなさんがリードしたいチームや、みなさんが受け持っているクラスの状態は、どこにあると感じますか?」

■チームに働きかける(4) 安心感と責任感を両立させるには

では心理的安全と責任どちらも高いチームは、どうすれば実現するのだろう?

「例えば、心理的安全は高いもののメンバーの責任は低いチームに対しては、『責任感をもたせるために各自に役割を与えればいい』と考えがちです。ですが、昨日の後藤さんの氷山モデルを踏まえるなら、それは表面に見える出来事にだけ反応した対策。各メンバーが責任感をもとうとしない構造やメンタル・モデルには迫れていませんよね」

だから「即効性のある改革プログラムがあるわけではなく、小さなことの積み重ねが大事になってくる」として、講師側からいくつかの具体例が示された。

その一つがチーム・バロメーターという手法。

各チームに、自分たちのチームの「心理的安全性」と「責任感」の状態をチェックできるような問いを3つほど選んでもらい、2週間に1回など、定期的にその質問を本人に送信、評価してもらう。

そうした定期的な確認でチームを診断し、望ましくない状態なら何が原因か、各メンバーとその構造やお互いのメンタル・モデルまで探るつもりで、見直していくのだ。

このチームづくりについては、先生たちからも忌憚のない意見が出た。

「グーグルのような企業におけるチームと、学校の教室で30~40人の子どもと向き合うチームとでは、心理的安全や責任の高め方も同じようにはいかないのではないか

その意見は大歓迎され、「先生たちのアイデアもぜひ教えてください」と問い返された。

実践したいこと、実践していること、先生たちが次々と思いを語った。

「教室で30~40人が一律に同じ課題を解くという状況にもはや無理がある、と感じていまして、課題を個別化または選択できるものにしていったほうがいい、と思っています。そして課題の提出も『僕は口頭でやります』『私は動画を作ってやります』『僕は踊りで表現します』などと、生徒が自分の得意な方法でできるようにする。そうした環境になれば自然に学習ゾーンに向かうのではないかな、と思うんです。実現するのは大変なことですけれども、学校をそうした場に変えていきたい、と思って、勉強しているところです」

「数学の授業でカンニングOKの集団テストをやっています。5~6人のグループで競走する形にして、全員で分担しないと絶対に間に合わないテストをつくるんです。苦手だとあきらめる子をなくしたい、というのが発端で、生徒は自分にできることで仲間の力になりたいし、ゲーム性もあるので、結構、楽しんでくれています。個々の学力に結びついているかは、まだ自信がないのですが……」

■チームの一人ひとりと向き合う(1) コーチングを学ぶ

ここまではチームにどう働きかけるか、チームの環境をどう整えるかを考えてきた。

出所:GROWモデルはGraham Alexander,Alan Fine,Sir John Whitmoreが開発

午後のワークではさらに「チーム一人ひとりとどう向き合うか」にまで踏み込んだ。

その際の1手法として、みんなで学んだのがコーチングだ。「質問」と「傾聴」を大事にして相手と向き合い、達成したいゴールやそこに向かうための選択肢や課題に、その本人が気づき、みずから行動を起こせるよう、後押しする手法。

チームをリードするうえでの活用の仕方としては、子どもたちと、または同僚など仲間と、何をどのように一緒に目指すかを考えたいときに、有効なはずだ。

基礎としてまず学んだのは、質問の仕方。

「こんな質問されたらどう感じますか? これらの質問が『よろしくない』と感じるとしたら、それはなぜですか? では、どんな質問なら相手は話しやすく、また思考が広がっていきそうですか?」

みんなでこうした点を話し合ったうえで、質問を進める順番の一つの型として、下のようなGROWモデルも学んだ。

■チームの一人ひとりと向き合う(2) コーチングを実践する

学んだことを活用することも、さっそくやってみた。

3人組になって、「コーチする人」「コーチを受ける人」「オブザーバー」の役を決める。

そのうえで、「コーチを受ける人」が学校で解決したい課題について、コーチングのGROWモデルを使って考える。

1回の時間は、コーチング12分+振り返り3分で、計15分。

そのセッションを役を代えて3回行い、全員が全部のポジションを体験する。

場所は校舎のどこでもかまわない、とされたので、各チームが心地よく話せる空間を求めて方々に散った。

実際にやってみると、「コーチをする側」と「コーチを受ける側」それぞれについて感じたことがたくさんあったようだ。

「驚いたのは、おそらく普段からの癖なのでしょうね、『答えを提示する癖』が出てしまったことです。コーチ役のときは自分の意見を言わないようにしたはずが、オブザーバーの方に聞いたら3回くらいポロッと言ったそうで。相手に気持ちを整理させることに徹する、という難しさを感じました。同時に、コーチングには信頼関係が欠かせない、とも思いました。関係性ができていないと、コーチを受ける側は『特に問題ないです』で話を終わらせてしまうな、と。学校でもコーチングを活用していけるよう、まずは子どもたちや同僚との普段のコミュニケーションを大事にして、関係性を深めていきたいです」

「コーチを受ける人がドライバーで、コーチは地図のようなもの。どの目的地にどの道で向かうかはドライバーが選ぶことで、コーチが誘導することではない。だから『それ、あかんと思うわ』『それ、いいね』といった発言も禁じ手――となってみて気づいたことがあるんです。『相手を好きになって興味をもたないと、これ、質問続けへんわ』と。自分の中では、コーチに徹しようとすると『相手を好きにならんと』という作用まで起きて、これって新鮮やな、と思いました」

「コーチを受けた実感としては、私の場合、基本的に最後まで課題へのモヤモヤは残ったんですね。でもGROWモデルでは『明日、何をしよう』というところまで決められるのがよくて、そういう意味では、大きな答えや方向性は必ずしも得られなくていいのかもしれません。子どもたちにも『とりあえず明日、何々をしてみよう』と自分から行動できるようにすることを目標に、コーチングを活用するのもいいかな、と思いました」

■チームの一人ひとりと向き合う(3) コーチングを疑う

しかし一方で、「チームをリードするためにコーチングを活用する」ということに対しては、先生たちの中からいくつか疑問の声もあがった。

そして先生たちと講師陣で、考えを深める議論が繰り広げられることになった。

「コーチングは、本人がもっている課題を“引き出してあげる”手法だと思うんです。それに対してチームをリードするというのは『チームをこういうふうにもっていきたい』という方向性があって、そこにみんなを“巻き込む”ことだと思います。ですが、チームの全員が『その方向性をどうやって目指せばいいか』を考えたがっているとは限らない。要は『相手がその方向性に対する課題をもっていない』こともあると思うんです。そうした相手に“チームをリードするためのコーチング”ができるかは疑問です」

「なるほど。例えば子どもたちも、自分にその気がないのに、先生からそうしたコーチングを受けたくはないですよね。そういう場合って、学校ではどうすればいいでしょう?」

「教員が『進路選択や勉強に主体的に取り組むチームになってほしい』と思っていても、多くの子はそんな課題意識をもっていないと思うんです。そんなときは、『どんな大人になりたい?』『生活で何を大事にしたい?』とか抽象的なところから始めて、『優しい人になりたい』と返ってきたら『じゃあどんなふうに優しくする?』『それをするには何が必要になりそう?』『その理想に近づくためにできることは何だろう?』と課題を具体化していってもよいのかな、と。テーブルで話していて『それは誘導ではないか』とも指摘されたのですが、『一緒に課題を形づくる』とも言えないかな、と考えています」

「子ども一人ひとりの思いを、コーチングを通してチームの方向性とすり合わせていく、ということですか? かなり恣意的な導きではないか、という懸念が湧いたんですが」

「今日のコーチングでは、最後に3人で振り返りをしましたよね。同じように学校でも、やり終えたときに相手と振り返りをして確認するとよいのではないでしょうか。前提として、コーチングでは『コーチをする側ではなく、コーチを受ける側が答えをもっている』ことを共有しておいて。その振り返りで、こちらが『自分が答えを出せたか』を尋ね、相手が違和感を抱くようであれば、じゃあ、今のは違ったねと。恣意的な導きではないかという懸念には、そうした設計でカバーできる部分があるように思います」

「私は、導くようなやり方はコーチングではない、と感じています。ただし、チームをリードするうえで『導く』という手法がダメなわけではない、と思うんです。たぶん、相手と向き合いながら、コーチングをしたり、カウンセリングをしたり、ガイダンスをしたりと、組み合わせていくのではないか、と。そしてその際に『今、自分はどのスタンスで向き合っているか』を明確に意識したほうが、うまくいくんじゃないかな、と思いました」

「ありがとうございます。実は休憩中、講師側でも『コーチングはすべての問題を解決できるものではなく、あくまでも一つのツール。それをどこまで伝えきれたか不安だ』と話していたんです。たしかに、いろいろな向き合い方を、意識的にできるとよいですよね」

■振り返り:2日間の学びを、明日にどうつなげていく?

以上をもってプログラムはほぼ終了。

最後に先生たちは、この2日間で学んだことをもとに、明日からどんな行動を起こすかを決めることになった。それも一人ではなく、みんなの力を借りながら。

まずは自分のアクションを考える。次に、今浮かんでいる疑問や、課題に感じていることを手元の白紙に率直に記す。

そのうえで、全員がテーブルをぐるぐるまわり、ほかの先生の疑問や課題に対して具体的な意見やアドバイスを書き込んでいく。

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。

どの先生も時間の許す限り、他の先生の用紙に目を落としては自分の言葉を添えていった。

最後の全体でのシェアが始まった。

「私は、『学校に戻ったら、みなさんは何からアクションしますか?』ということが気になって訊きました。『今回のことをしゃべりまくる!』『好奇心と他人から学ぶ姿勢を示し続ける』といった意見をいただいて。『せっかく今日コーチングを受けてスモールステップを決めたので、それを実行していきたい』という方もいました」

「僕は、『チームのメンバーが“やらなければいけないからやる”という自発性ではなく、“楽しいからやる”という自発性をもてるようにするには?』と尋ねました。『全員がwin-winになる共通のゴールをどうすればもてるか話し合う』『みんなでやりたいと思える物語をつくる』といったアイデアをいただきました。それから『自分がめちゃめちゃ楽しんでいたら、まわりも楽しそうなことやっているね、と集まってくるよ』という意見もあって。これは本質的だなと思いました。セルフリーディング、チームリーディングをするときに、自分が嫌な顔をしてやっていたら、どんなにいいことでも、人はついてこないですよね。自分が笑顔でできることがすごい大事なのかな、と思いました」

学校現場では今、“やらせる”のではなく子どもたちが“やりたくてやる”ような主体的な学び、それも仲間と協働で取り組むような学びを、どうやって実現させたらいいいかと、先生たちが日々頭を悩ませている。でも、そこを目指すうえで案外重要なのは、悩みつつも、まずは先生たち自身がみんなで学ぶことをもっと楽しんでいくことなのかもしれない。

例えば、自分の意見を受け止めてもらえる安心感があるなかで、教育の課題をどう解決していくか、ああでもない、こうでもない、とみんなで対話しながら、考えを深めて。

気になったセミナーやワークショップに出かけてみよう。

自分たちでこんなテーマの勉強会を企画してみよう。

教員である私自身が、学ぶことをもっと楽しんでいこう。

このレポートが、そうしたアクションを起こす一助となれば幸いです。

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